SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume3 No.2

SPring-8 Section B: Industrial Application Report

連続式超臨界合成により得られたNi粒子の局所構造解析
XAFS Study of Ni Nanoparticle Prepared by Continuous Supercritical Hydrothermal Technique

DOI:10.18957/rr.3.2.530
2012B1872 / BL14B2

澤谷 清一a, 佐藤 充孝b, 中平 敦b,c, 飯田 勝康a

Seiichi Sawatania, Mitsutaka Satob, Atsushi Nakahirab,c, Masayasu Iidaa


a(株)アイテック, b東北大学金属材料研究所附属研究施設関西センター, c大阪府立大学

aITEC Co. Ltd., bKansai Center for Industrial Materials Research, Institute for Materials Research, Tohoku Univeristy, cOsaka Prefecture University


Abstract

 単分散金属ナノ粒子の合成および大量生産を目的として、連続式超臨界水熱合成装置にて合成したニッケル微粒子について、XAFS測定により局所構造解析を行ったところ、ニッケル金属微粒子が得られており、酸化が進行していることが確認された。今後は酸化を抑制可能なニッケル金属微粒子の製造を最適化検討して1%未満の酸化を目指す。


キーワード: ニッケル、ナノ粒子、XAFS、超臨界水熱合成



背景と研究目的:

 現在、産業界において金属ナノ粒子は様々な分野での応用が検討されており、ナノ粒子の特徴である高比表面積や高活性・反応性であることを利用した高効率な触媒やフィラーおよび各材料表面に修飾することで新規機能を付与する材料としてなど、広い分野での産業利用が進展している[1]。例えば、ディスプレイ用光学フィルムの透明伝導性フィルムは、有機系導電材料を使用しているが、その導電性を高めるために有機系の代替として無機系の金属微粒子粉を使用する動向がある。また、モバイル端末機器の主要構成部品であるプリント基板は多重に積層する構造となっており、更なる高機能化には積層基板枚数を増やすことが不可欠なため、内部電極である金属層の微粒子化が進められている[2]

 これまで一般的に使用されている機械的に粉砕された微粒子では、粒度分布のばらつきや均一な分散が難しい。一方、水熱合成は分子レベルからの合成を水の高温高圧の超臨界の状態で行う方法であるが[3]、従来のナノ粒子を合成する水熱合成手法は、バッチ式にて様々に開発されてきたが、連続大量合成が難しく、熱履歴を受けるなど、事業化は困難であり、本格的に市場で採用されていない。

 これらの課題を克服することを目的として、単分散金属ナノ粒子の合成および大量生産を目指し、連続式超臨界水熱合成装置を用いた金属ニッケル(Ni)ナノ粒子の合成を行い、XAFS測定により局所構造解析を行った。


実験:

 測定試料は、(株)アイテック製の市販装置であるMOMI超megaにて合成した、1次粒子が50~100 nmのNi粒子が濃度5 wt%の水溶液である、連続式合成Ni分散液および、それを真空乾燥機内で窒素パージ後、60°Cにて24時間真空乾燥させた連続式合成Ni乾燥品である。また、参照試料として、Ni foil、NiO、Ni(OH)2、NiCO3、Ni(CH3COO)2をそれぞれ測定した。

 Ni-K吸収端のXAFSスペクトルの測定方法は、参照試料および乾燥Ni粉末は透過法、Ni分散液は19素子Ge半導体検出器を用いた蛍光法により測定した。Si(111)分光結晶を用い、測定範囲11.5 – 14.4°、dwell time 50 msの条件でQuick-XAFSによる測定を行った。また、19素子Ge半導体検出器を用いた蛍光法では10回の測定で得られたデータを積算した。得られたデータはREX2000(リガク社製)を用いて解析を行った。


結果および考察:

 図1に連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子のXANESスペクトルを示す。連続式合成Ni乾燥品のXANESスペクトルはNi foilのスペクトルと良く一致した。一方、溶液中に保存した試料のスペクトルは、Ni foilのスペクトルおよびNi(OH)2のスペクトルを足し合わせたようなスペクトルであった。また、図2に示すように、合成試料のスペクトルに対して、Ni foilおよびNiO、Ni(OH)2それぞれのスペクトルを用いてカーブフィッティングを行い金属Ni、Ni(OH)2およびNiOの割合を算出したところ、乾燥品ではNiOが3 wt%、溶液中の試料ではNiOが10 wt%、Ni(OH)2が35 wt%程度存在していることが示唆された。



図1 連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子のXANESスペクトル



図2 連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子のXANESスペクトルのフィッティング結果


 図3に連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子のEXAFS振動を示す。図中のEXAFS振動には波数k3の重み付けがなされている。連続式合成Ni乾燥品のEXAFSスペクトルはNi foilのものと非常によく似たスペクトルであるが、分散品のスペクトルは今回の測定で用意したどのリファレンス試料とも一致を示さなかった。

 図4にこれら試料の動径構造関数(RSF)をそれぞれ示す。図中の黒線で示したものが今回の測定により得られたスペクトル、赤線がREX2000を用いてフィッティングされたスペクトルを示している。

図3のEXAFS振動から、分散品のスペクトルがk = 13以降において強いノイズが見られていることから、k = 12までの測定データを用いて解析を行っている。乾燥品の動径構造関数より、すべてのピークがNi-Ni結合としてフィッティングでき、第一近接のNi-Ni結合の結合距離は2.485 Å、配位数は12.6であった。以降、3.732 Å、4.289 Å、5.04 Åとなり、Ni箔のデータと非常に良い一致を示した。一方、溶液中の試料に関しては、図中に示すようにNi-O、Ni-Ni、Ni-O結合としてフィッティング可能であり、それぞれの結合距離は1.973 Å、2.461 Å、2.859 Åであった。上記以外のパラメータを表1に示している。

 今回の測定結果から、連続式合成により得られた試料はNi金属微粒子が得られているが、乾燥品で3 wt%、溶液中の試料においては35 wt%の酸化物および水酸化物が確認された。これは得られたNiがナノ粒子であるため、反応性が非常に高くなり、容易に酸化が進行してしまうためである。そのため、適切な表面修飾を行うことで、1 wt%ほどに酸化を抑制することが重要となる。


表1 カーブフィッティング時の各パラメータ



図3 連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子のEXAFSスペクトル



図4 連続式水熱合成により作製したNiナノ粒子の動径構造関数およびカーブフィッティング結果


今後の課題:

 今回のXAFS測定により、金属ナノ粒子が酸化しやすいために、粒子表面に酸化膜を形成することが確認された。

 今後は1%未満と酸化を抑制可能な金属Niナノ粒子の製造を最適化検討していく。


参考文献:

[1] 川合 知二、図解ナノテクノロジーのすべて、pp.20 (2001).

[2] 株式会社富士キメラ総研、2011年微粉体市場の現状と将来展望、pp.185 (2011).

[3] 碇屋 隆雄、超臨界流体反応法の基礎と応用、シーエムシー出版、pp.67 (1998).



ⒸJASRI


(Received: June 10, 2013; Early edition: May 28, 2015; Accepted: June 29, 2015; Published: July 21, 2015)