SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume3 No.1

Section B : Industrial Application Report

加硫過程においてゴム中に発生する気泡の発生源の解明
Analysis of the Origin of Bubbles in the Rubber under Vulcanization

DOI:10.18957/rr.3.1.35
2013B1523 / BL46XU

佐藤 有二, 平井 秀憲, 広田 孝司, 戸田 博美

Yuji Sato, Hidenori Hirai, Takashi Hirota, Hiromi Toda

横浜ゴム株式会社

THE YOKOHAMA RUBBER CO., LTD.



Abstract

 ゴム製品の品質・生産性の向上を目的として、加硫時に生じるゴム内部での発泡の起源を解明すべく、X線イメージングによる加硫中のゴム内部での発泡過程のリアルタイム観察を行った。その結果、発泡は分解能0.554 μmの画像上では起点となるような特異な像がない状態から、10~数10 μmの気泡が発生する事で始まっている事を見出した。


キーワード: ゴム、発泡、X線イメージング



背景と研究目的:

 ゴム製品の内部に気泡が存在すると、そこを起点とした破壊が生じ、ひいては重大な品質トラブルにつながる危険性が生じる。そのため加硫(加熱・加圧)工程の段階で気泡を作らない、残さない事はゴム製品の品質上非常に重要な要素といえる。

 そこで、課題番号2012B1157にてX線イメージングを用いた加硫中のゴム中の気泡の発泡/消泡過程のリアルタイム観察を実施し、大きな成果を得た[1]。また同時に、

①加硫中の空気の分散性が、ゴムの配合と関係している可能性がある事

②成長する泡、成長しない泡が存在し、その違いが何に起因するものか

③加硫時間を変化させても発泡するときのプレス圧は一定であり、仮説と異なる事

といった新たな課題も多く見つかり、今回は課題②について各気泡の発生源に関する考察を行うため高分解能での観察を行った。


実験:

 実験装置は、厚さ10 mmの未加硫ゴムサンプルを厚さ2 mmの石英ガラス窓の付いたメス金型(図1 Mold1-1、1-2)に入れ、上からオス金型(図1 Mold2)でふたをする。エアシリンダーでオス金型をプレスすることでサンプルに圧力(~1.3 MPa相当)をかけられるようになっている。圧力源はエアコンプレッサを用いた。またメス金型にヒーターを埋め込むことで温度調節できるようにした。これにより任意の加硫条件(圧力、温度)を設定可能にしている。なお、サンプルにかかる圧力はエアシリンダーにかける圧力から、サンプルの温度は金型に熱電対(図1 T/C)を設けることで計測している。

 BL46XUにおけるX線イメージングカメラは、ビームモニタ (浜松ホトニクス製、BM2) とCCDカメラ (浜松ホトニクス製、C11440-10C) で構成した。サンプルとカメラとの距離を100 mmとし、このとき0.531 mm×0.400 mm (0.554 μm/pix)の画像を得ることができた。また露光時間(フレームレート)は、ゴム内部の時間変化を詳細に捉える事を優先に画質とのバランスから約50~80 ms(12.5~20 fps)とした。



図1.装置のレイアウト(全体図と金型分解図)


結果および考察:

 図2に過去にBL19B2で採取した発泡状態の画像の比較を示すが、今回は分解能を高めた観測を実施した結果、視野が極端に狭くなり視野内で発泡現象が起こる可能性(発泡の瞬間を観測できる可能性)が極端に低下してしまった。具体的には3シフトのビームタイム中に66回の測定を実施し、視野内で発泡が起きたのは3回だけであった。そのため、当初予定していたコンパウンド種違い、温度違いでの変化については確認ができなかった。



図2.イメージング画像一例


 発泡の瞬間を捉えられたケースについての代表画像を図3に示す。除圧完了から51.85 sが経過した時点では、既に1つの泡(緑丸内)が発生している。この泡は、画像上で視認できる直径10 μmほどの大きさから約20 s掛けて40 μmほどに成長し、最終的には50 μmほどで成長が止まっている。一方、その0.1 s後の除圧完了から51.95 s後の画像では、50 μmほどの泡が突如現れ(桃丸内)、除圧完了から75 s後には110 μmほどに成長した。また、どちらの泡も発生箇所について時間を遡って確認しても、画像上で泡の起点となるような特異点は見付からない。



図3.発泡過程のX線イメージング像


 さらに、泡の発生を捉えられる機会が極端に少ない事を補うために、除圧前後に試料を固定したXYステージを水平方向に6 mm、垂直方向に1 mm程度の範囲で動かし、少し広い範囲の静止画を撮影した。その結果の一例を図4に示すが、静止画ではあるが除圧(発泡)前後での同一箇所の状態を確認する事ができた。この画像から、除圧後には、最小20 μm、最大700 μm程度の泡が発生しているが、その発泡が生じた位置でも除圧前には特別気泡などは確認できなかった。



図4.除圧前後のX線イメージング像


 以上の結果より、発泡現象は、分解能0.554 μmの画像上では起点となるような特異な像がない状態から、10~数10 μmの気泡が (50 ms以下のオーダーで) 瞬間的に発生する事で始まっている事が分かった。また、この発生の瞬間であってもμm/s単位のスピードで徐々に大きくなっていく泡と100 ms以下のオーダーで瞬間的に数10 μmまで成長する泡が確認された。これらは、各々空気起源、揮発成分起源と考えられる。従って、泡の起源は、空気、揮発成分ともに数μm程度以下のサイズでゴムコンパウンド中に分散しているものが、減圧にともない凝集発泡すると考える。


今後の課題:

 高分解能で泡発生の瞬間を効率良く観察する事が課題である。サンプルの厚さ増、コンパウンドの配合調整、人為的なエア、揮発成分の混入などを検討し、発泡起源に関するより詳細は検証を実施する。


参考文献:

[1] 松田健太 他、利用課題実験報告書, 2012B1157.

  松田 他、SPring-8 利用研究成果集2012B1157, Vol.2, No.1 (2014) 64-68.



ⒸJASRI


(Received: April 25, 2014; Early edition: September 30, 2014; Accepted: January 16, 2015; Published: February 10, 2015)