SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume2 No.1

Section B : Industrial Application Report

海水で練り混ぜたモルタルの通水養生によるひび割れの経時的観察による自己修復機能の評価
Evaluation on Self-curing Function of Cracks of Mortar Mixed with Sea-water under Passing Water Curing

DOI:10.18957/rr.2.1.20
2011B1839 / BL20B2

人見 尚

Takashi Hitomi

(株)大林組

Obayashi. Co. Ltd.


Abstract

 練混ぜ水に海水を用いたモルタルにひび割れを導入し、28日間の通水試験を用い自己治癒特性について評価を行った。モルタル供試体に対する通水試験では、モルタルのひび割れ部の空隙に新たな水和物が生成することが観察された。上水で練り混ぜた普通ポルトランドセメントによるモルタルでは自己治癒は一部に留まり、高炉スラグ微粉末を結合材に加え練混ぜ水に海水を用いたモルタルの自己治癒性の高いことが確認された。ひび割れの自己治癒は、周囲のセメント硬化体を原材料として用いられると推察される結果を得た。


キーワード: 海水練りモルタル、X線CT、ひび割れ、自己修復


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背景と研究目的:

 コンクリートの美観や強度を損ねるひび割れの補修や予防には多くの努力が払われている。コンクリートのひび割れが自然に補修されることは、コンクリートの自己治癒と呼ばれている。

 一方で、練混ぜ水に海水を用いたコンクリートが開発され、これまでに配合や混和材の検討により、実用的な強度を得られることが分かった。このようなコンクリートでは、内在する海水由来の成分とセメント成分との反応により二次鉱物の生成が期待されるため、ひび割れ部の自己治癒効果が期待される。

 しかし、海水練りセメント系材料のひび割れ自己治癒を報告した例はほとんどない。高炉スラグ微粉末を用い練混ぜ水に海水を用いたモルタルについて、ひび割れ内部の修復についての直接観察を目的とした。


実験:

 供試体は、普通ポルトランドセメント50%、高炉スラグ微粉末50%に混和材を混合したもの(以下、CB50Pと略記)、高炉セメントB種にシリカフュームを15%置換したもの(以下、CBSF15と略記)およびCBSF15に混和材を混合したもの(以下、CBSF15Pと略記)の3種とした。材齢330日まで水中養生を行い、供試体を直径5 mmで高さが6〜7 mmの円筒形に加工した。その後、熱収縮チューブの中心に供試体、両端に通水用のシリコンチューブを配置し、ドライヤーで加熱し供試体とシリコンチューブを固定し、固定した供試体に万力を用い、割裂によりひび割れを導入した。初期状態として供試体のX線CT撮影を行った後、28日間の通水試験を行った。通水量は1時間あたり3~5 mlとした。その後、再び供試体のX線CT撮影を行った。X線CTは、SPring-8のBL20B2のX線CT装置を用いた。X線の照射エネルギーは25 keV、投影数は1500および露光時間は3秒とした。


結果および考察:

 結果の例として、CB50P、CBSF15ならびにCBSF15Pの通水試験前と通水試験後の断面図を図1に示す。CB50PおよびCBSF15では、図中の閉塞領域AおよびBに示した位置で、一部でひび割れ閉塞の領域が観測された。特に、CBSF15では、図中の閉塞領域CおよびDに示した位置で試験前には見られなかった材料が新たに見られた。CBSF15Pにおける図中の暗色化領域で示した部分は、硬化体部分に暗色化の傾向が確認された。CBSF15Pでは変化が顕著でない傾向が見られる。硬化体部分での暗色化の傾向は、ひび割れ周囲の硬化体部分のセメント硬化体部分が粗化し、変化を起こさない細骨材の色調の違い、すなわちX線吸収係数の値の違いが目立つことによると考えられ、試験前後の断面図の比較により通水による組織の変化を把握できることが示されたと考える。この粗化とひび割れ修復との関係は、粗化により供給された供試体の組織がひび割れ部において、水と接することにより、ひび割れ部分を埋めるように新たな硬化体を生成するメカニズムが働いているものと考えられる。2011A期の実験では、通常用いられる普通ポルトランドセメントと上水の組み合わせでは、今回示したような自己修復の傾向は顕著ではなかった[1]。海水と普通ポルトランドセメントならびに高炉スラグの組み合わせでは、様々なイオンが混和されているため、このような自己治癒の機構が働いたものと考えられる。


今後の課題:

 現在は、ひび割れ幅を制御できないために、ひび割れ補修が可能な最大ひび割れ幅を求めることができない。さらに、今回用いたどのセメントの成分が自己修復に結うようであったかの特定ができていない。今後、供試体条件の精密な実験条件の管理の下での再試験とX線回折などと連成させた分析手法の導入により、自己修復メカニズムの解明を行う必要がある。


参考文献:

[1]人見尚:平成23年度重点産業利用課題報告書(2011A) “コンクリートのひび割れの発生位置と構成材位置の相関の把握と、ひび割れの経時的観察による自己修復メカニズムの研究”、2011A1686.



図1. 供試体の試験前後の断面図の例



ⒸJASRI


(Received: May 7, 2012; Early edition: April 25, 2014; Accepted: July 3, 2014; Published: July 10, 2014)