SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

早期公開 最新版

SPring-8 Section A: Scientific Research Report

2016A1270 / BL40XU
X線マイクロビーム構造解析法による溶液成長させた エピタキシャル単結晶の構造解析
X-ray Micro-Beam Crystal Structure Analyses of the Epitaxial Growth Single Crystals from Solutions

鳥海 幸四郎a, 安田 伸広b, 國森 彩乃a, 小澤 芳樹a

Koshiro Toriumi a, Nobuhiro Yasuda b, Ayano Kunimori a, Yoshiki Ozawa a

a兵庫県立大学, b (公財)高輝度光科学研究センター

aUniversity of Hyogo, bJASRI

Abstract

 発光色の異なる同形の Cu(I) と Ag(I) の六核金属錯体の組み合わせについて、Cu(I) 錯体の基板結晶表面に Ag(I) 錯体をクロロホルム溶液から結晶粒として成長させた試料に、X線マイクロビームを照射して回折像を測定し、表面結晶粒と基板結晶の方位測定と単結晶構造解析を行った。その結果、それぞれ既知構造と一致し、測定した4つの表面結晶粒と基板結晶の結晶方位が、1つの結晶粒を除いて、4.4˚ 以内で一致することを明らかにした。


Keywords: 放表面結晶、界面構造、エピタキシャル成長、単結晶X線構造解析、X線マイクロビーム、発光性多核金属錯体


2018A0073 / BL43IR
BL43IRにおける磁気光学ステーションの改修
Improvement of Magneto Optical Station in BL43IR

井口 敏a, 池本 夕佳b, 森脇 太郎b, 佐々木 孝彦a

Satoshi Iguchia, Yuka Ikemotob, Taro Moriwakib, Takahiko Sasakia

a東北大学金属材料研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター

aIMR Tohoku University, bJASRI/SPring-8

Abstract

 BL43IR に既設の無冷媒超伝導マグネットを活用し、磁場中赤外顕微分光測定系を改良することで、信号強度の大幅な増大と測定可能エネルギーの遠赤外光領域への拡張に成功した。また、クライオスタットを新造更新し、冷媒の消費量を大幅に抑えることができた。これらの結果により、本ステーションは、低温(~ 4 K)、強磁場(~ 14 T)の環境下で、200-10000 cm-1 程度の幅広い赤外光学スペクトルを再現性よく安定的に得ることができる貴重な測定系となった。


Keywords: 強磁場、低温、赤外、顕微分光


SPring-8 Section B: Industrial Application Report

2015A3386 / BL08B2
アイソタクティックポリプロピレンの高温溶融状態における メモリー効果と結晶融解構造に関する研究(Ⅱ)
Studies of Memory Effects at the Temperature Much Higher than Melting Point and Melt Structures in Isotactic Polypropylene(Ⅱ)

伊村 宏之, 山下 友義

Hiroyuki Imura, Tomoyoshi Yamashita

三菱ケミカル(株)

Mitsubishi Chemical Corporation

Abstract

 アイソタクティックポリプロピレン(iPP)の昇温過程(50℃~200℃)における SAXS/WAXS 同時測定を行い、iPP のα晶の融解過程について詳細に調べた。その結果、結晶融解過程に関しては、昇温に伴うWAXSピークの消失挙動から、iPPのα晶は、DSCの吸熱反応が検出できないレベルの温度領域(174℃~190℃)においても残存していることを明らかにした。

 また、SAXS プロファイルの変化より、昇温に伴うラメラ周期長の増大と、並びに、ドメイン構造の出現が明らかとなり、かつその構造は融点よりやや低い温度領域から 190℃ 付近まで明確に観測されることを示した。


Keywords: アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、SAXS、オリジン、メソフェイズ、SPring-8


2015B1268 / BL19B2
X線小角散乱法による溶接熱影響部の微視組織解析
Microstructural Analysis of Weld Heat Affected Zone in Steels by Small-angle X-ray Scattering Method

諸岡 聡

Satoshi Morooka

首都大学東京(現所属:日本原子力研究開発機構)

Tokyo Metropolitan University (present affiliation: JAEA)

Abstract

 鉄鋼材料の微量なチタン添加は溶接熱影響部の切欠靭性改善に有効である。本研究は、放射光X線による小角散乱法を用いて入熱量を制御した再現熱サイクル試験鋼材中の析出粒子を定量評価することを目的とする。本実験は、産業利用Iビームライン BL19B2 を使用して放射光X線小角−極小角散乱測定を実施した。その結果、低 q 側の Guinier(ギニエ)領域が観察できない散乱プロファイルに対して、Porod(ポロド)則に従い、散乱プロファイルを解析することで、析出粒子の総界面積を定量評価することに成功した。本手法は微視組織解析の一つとして有効的である。


Keywords: 放射光X線小角散乱法、溶接熱影響部、窒化チタン粒子、Gunier 領域、Porod 則


2015B1778 / BL19B2
巨大熱電効果を有する有機半導体薄膜の温度変調による結晶構造解析
Analysis of Crystal Structure with Temperature Modulation for Organic Thin Films Exhibiting the Giant Seebeck Effect

阿部 竜a, 菊池 護b, 小金澤 智之c, 渡辺 剛c, 小島 広孝a, 池田 征明d, 吉本 則之b, 中村 雅一a

Ryo Abea, Mamoru Kikuchib, Tomoyuki Koganezawac, Takeshi Watanabec, Hirotaka Kojimaa, Masaaki Ikedad, Noriyuki Yoshimotob, Masakazu Nakamuraa

a奈良先端科学技術大学院大学, b岩手大学, c (公財)高輝度光科学研究センター, d日本化薬株式会社

aNAIST, bIwate University, cJASRI, dNippon Kayaku Co., Ltd.

Abstract

 有機低分子半導体薄膜について、温度可変試料ステージを用いて2次元斜入射X線回折(2D-GIXD)測定を行い、2次元回折画像を得た。この画像から格子パラメータの温度依存性を求め、アルキル基が導入された有機低分子に関して大きな体積熱膨張、ヘテロ原子が導入された有機低分子の負の体積熱膨張など、分子構造に特徴的な熱膨張の関係性が得られた。今後、格子パラメータからパッキング構造を予測推定し、分子間相互作用と熱膨張、トランスファー積分の温度依存性などの解析に発展させる予定である。


Keywords: 有機半導体材料、熱電材料、構造相転移、熱膨張


2017B7268 / BL03XU
アイソタクティックポリプロピレンの高温溶融状態における メモリー効果と結晶融解構造に関する研究(Ⅰ)
Studies of Memory Effects at the Temperature Much Higher than Melting Point and Melt Structures in Isotactic Polypropylene (I)

山下 友義, 藤江 正樹

Tomoyoshi Yamashita, Masaki Fujie

三菱ケミカル(株)

Mitsubishi Chemical Corporation

Abstract

 アイソタクティックポリプロピレン(iPP)の溶融紡糸による未延伸糸の急速冷却過程において、280 °C よりも高い溶融状態から得られた未延伸糸では、α 晶は形成されず準安定相であるメソフェイズが形成され、逆に 280 °C より低温での紡糸では α 晶が形成されることを示した。このように、融点より非常に高い温度での溶融状態が、急速冷却後の結晶化の有無や状態を決定づけていることを明らかにした。この理由としては、高温溶融状態にて、iPP の結晶化に重要な影響を与える何らかの凝集構造(オリジン)が存在し、これがメモリー効果として融点より 100 °C 以上も高い高温領域まで残存しているためと考察した。

 また、未延伸糸の構造はその後の延伸過程での伸び切り鎖の構造形成において決定的因子となり、メソフェイズを有する未延伸糸から延伸を開始することが、高延伸倍率で高強度な iPP 繊維を得るのに圧倒的に有利であることを明らかにした。


Keywords: アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、 SAXS、オリジン、メソフェイズ


2018A1556 / BL19B2
線維芽細胞が産生する真皮線維構造の評価法の開発
Development of an Evaluation Method of Dermal Fiber-like Structures produced by Fibroblasts

足立 浩章, 奥野 凌輔, 田中 浩

Hiroaki Adachi, Ryosuke Okuno, Hiroshi Tanaka

日本メナード化粧品(株)総合研究所

Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.

Abstract

 化粧品の有効性を評価することを目的として、現在様々な試験が行われているが、真皮における「コラーゲンの質」を評価する方法は十分に確立されていない。我々はこれまでに、線維芽細胞の広角・小角X線散乱を測定し、コラーゲンの三重らせん構造、分子間距離、長周期構造に由来する回折について観察してきた。本研究では、線維芽細胞の小角・極小角X線散乱の測定を行い、より大きな構造に由来するX線散乱の観察が可能か検討した。その結果、長周期構造の回折に加え、由来不明の肩ピークが観察された。また、試料の固定、乾燥状態によって、観察されるピークの有無や大小に変化が見られた。


Keywords: コラーゲン、長周期構造、線維芽細胞


SPring-8 Section C: Technical Report

2014A1889 / BL39XU
X線屈折レンズとKBミラーによる二段階ナノ集光光学系の開発
Development of a Tandem Nano-Focusing Optics with X-ray Refractive Lens and Kirkpatric-Baez Mirror

鈴木 基寛, 河村 直己, 水牧 仁一朗, 大沢 仁志, 宇留賀 朋哉

Motohiro Suzuki, Naomi Kawamura, Masaichiro Mizumaki, Hitoshi Osawa, Tomoya Uruga

(公財)高輝度光科学研究センター

JASRI

Abstract

 硬X線ナノビームによる顕微 XAFS/XMCD 測定の効率向上のため、BL39XU に二段階集光光学系を構築し、高フラックスの集光ビームを得るための開発を行った。X線屈折レンズと KB ミラーによる二段階集光光学系の概要、レイトレーシングによる光学系の評価、屈折レンズ素子の特性および実験で得られた集光ビーム性能について報告する。二段階ナノ集光光学系により、ビームサイズ 109(垂直)×136(水平) nm2 (半値幅)、光子フラックス 6×1010 photons/s の集光X線ビームが得られた。集光サイズは KB ミラーのみによる既存の光学系と同等であり、フラックスは10倍の向上がみられた。ただし、垂直方向の集光ビーム形状は非対称であり、全幅で 600 nm 程度の裾野が重畳している。屈折レンズの収差評価等による原因解明と、集光ビーム形状の改善が今後の課題である。


Keywords: X線ナノビーム、集光素子、顕微XAFS、顕微XMCD


2016A1839 / BL39XU
液体窒素冷却シリコン二結晶分光器の安定化と KBミラー集光光学系の高強度化に関する評価
Evaluation of Stabilized Si Double-crystal Monochromator with Liquid-nitrogen Cooling System and High Flux KB Focusing Mirror Optics

湯本 博勝, 山崎 裕史, 竹内 智之, 小山 貴久, 鈴木 基寛, 河村 直己, 水牧 仁一朗, 大橋 治彦

Hirokatsu Yumoto, Hiroshi Yamazaki, Tomoyuki Takeuchi, Takahisa Koyama, Motohiro Suzuki, Naomi Kawamura, Masaichiro Mizumaki, and Haruhiko Ohashi

(公財)高輝度光科学研究センター

Japan Synchrotron Radiation Research Institute

Abstract

 従来と比較して 100 nm × 100 nm あたり20倍の集光フォトン数が期待できる KB 配置型ミラー集光光学系を構築した。本光学系は垂直方向に関して光源の直接縮小投影を用いるため、不安定性の原因となりえる光路中の液体窒素冷却シリコン二結晶分光器について、熱的安定性に寄与する機器を改良した。高真空型集光ミラー姿勢調整装置を BL39XU 第2実験ハッチに導入し、集光性能を評価した。結果、2.5×1011 photon/s の集光ビーム:115 ~ 140 nm(垂直)× 93 nm(水平)(半値幅)を確認した。


Keywords: 液体窒素冷却シリコン二結晶分光器、集光ミラー、ナノ集光