SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

早期公開

SPring-8 Section A: Scientific Research Report

2013A1287 / BL38B1
人工FADを用いたD-アミノ酸酸化酵素の 酵素・基質複合体の構造解析
Structural Investigation on the ES Complex of D-amino Acid Oxidase By using Artificial FAD

宮原 郁子a, 瀬戸山 千秋b,二科 安三b

Ikuko Miyaharaa, Chiaki Setoyamab, Yasuzo Nishinab

a大阪市立大学, b熊本大学

aOsaka City University, bKumamoto University

Abstract

  補酵素FADの8位のメチル基を NHCH3 に置換したHM-FADをD-アミノ酸酸化酵素(DAO)に再構成させた酵素は、酸化力が低下し反応が進行しないため、DAOの基質D-アミノ酸と安定な複合体を形成することができる。そこでHM-FADを再構成したDAOと基質D-アミノ酸との複合体結晶構造を得ようと試みたが、基質が活性部位に固定された構造を得ることが出来なかった。


Keywords: D-アミノ酸酸化酵素、ES複合体


2014B1426 / BL47XU
Crドープ超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボン混相膜のHAXPES測定
Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy of Cr Doped Ultrananocrystalline Diamond/Amorphous Carbon Composite Films

花田 賢志a,冨永 亜希a,楢木野 宏a,杉山 武晴a,神谷 和孝a,池永 英司b,吉武 剛a

Kenji Hanadaa, Aki Tominagaa, Hiroshi Naraginoa, Takeharu Sugiyamaa, Kazutaka Kamitania, Eiji Ikenagab, Tsuyoshi Yoshitakea

a九州大学, b(公財)高輝度光科学研究センター

aKyushu University, bJASRI

Abstract

 数 nm のダイヤモンド結晶がアモルファスカーボン中に凝集した構造を持つ超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボン混相膜の成膜中に in-situ で Cr ドーピングを試みた。成長膜のVSM測定を行ったところ強磁性の発現が見られた。強磁性発現の起源を調べるために硬X線光電子分光により膜の内部を調べた結果、膜内部に Cr–C 結合が存在していることが明らかとなった。強磁性発現の起源としては、Cr–C 結合を形成している Cr が膜内部のナノ結晶ダイヤモンドの結晶格子内に存在して成長膜の強磁性発現に寄与した可能性が考えられる。


Keywords: 超ナノ微結晶ダイヤモンド、HAXPES、同軸型アークプラズマ堆積法


2014B1497 / BL28B2
多発肺転移モデルマウスを用いたマイクロビーム放射線治療における抗腫瘍効果の検討
Assessment of Microbeam Radiation Therapy with Lung Metastasis Mouse Model

椋本 成俊a, 赤坂 浩亮a, 中山 雅央a, 宮脇 大輔a, 佐々木 良平a, 梅谷 啓二b

Naritoshi Mukumotoa, Hiroaki Akasakaa, Masao Nakayamaa, Daisuke Miyawakia, Ryohei Sasakia, Keiji Umetanib

a神戸大学, b(公財)高輝度光科学研究センター

aKobe University, bJASRI

Abstract

 本研究では、通常X線照射(Broad beam irradiation)とすだれ状照射(Slit beam irradiation)の肺転移の抑制および呼吸性移動がある部位への照射精度を検討した。ビーム幅 25 μm、ビーム間隔 200 μm のすだれ状ビームを用いて、肺転移モデルマウスへの照射実験を行い、照射による肺転移の抑制を組織学的評価から行い、マウスの生存率に関しても検討した。


Keywords: 多発肺転移モデル、マイクロビーム放射線治療、すだれ状照射


2015A1795 / BL41XU
うま味受容体細胞外リガンド結合ドメインのX線結晶構造解析
Crystallographic Analysis of the Ligand-binding Domains of Umami Taste Receptor

細谷 麻以子, 山下 敦子

Maiko Hosotani, Atsuko Yamashita

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama University

Abstract

 T1r1/T1r3ヘテロ二量体は、味覚受容において、アミノ酸などを感知するうま味受容体として機能する。T1r1/T1r3受容体の主要な味物質結合部位であるリガンド結合ドメインについて、組換え発現・精製・結晶化を行い、得られた結晶のX線回折実験を行った。その結果、結晶から確認された回折は、異方性が高く、構造決定に十分な分解能の回折強度データを得ることができなかった。


Keywords: 味覚受容体、クラスC型GPCR


2012B4909 / BL15XU
Electronic Properties of Doped Topological Insulators (BiMn)2Te3 by means of Bulk Sensitive Hard X-ray Photoemission

J. Fujiia, G. Panaccionea, S. Uedab

aCNR-IOM, bNIMS

Abstract

  The influence of magnetic dopants on the electronic structures of topological insulators (TIs) is a key factor for magnetic TIs-based spintronic application. Here we measured core level and valence band hard x-ray photoemission (HAXPES) spectra for (BiMn)2Te3 single crystals as a function of Mn doping to investigate the modification of the bulk band structures of Bi2Te3 by the dopants.


Keywords: Topological insulators, Magnetic dopants, HAXPES


2015A1418 / BL43IR
水素結合型混合原子価レニウム錯体における遠赤外吸収スペクトル
Far-Infrared Absorption Spectra in Hydrogen-Bonding Mixed-Valence Re Complexes

松井 広志a, 富田 京志a, 赤城 達弥a, 池本 夕佳b, 田所 誠c

Hiroshi Matsuia, Atsushi Tomidaa, Tatsuya Akagia, Yuka Ikemotob, Makoto Tadokoroc

a東北大学, b(公財)高輝度光科学研究センター, c東京理科大学

aTohoku Univ., bJASRI/SPring-8, cTokyo Univ. of Science

Abstract

 N-H…N水素結合で結ばれたダイマーを基本単位とする混合原子価レニウム錯体単結晶試料について、顕微遠赤外分光実験を行い、吸光度スペクトルの温度変化を測定した。各種分子振動を観測し、DFT計算により帰属した。X線・中性子線結晶構造解析から、プロトンはN-N間の中心付近に分布することが分かり、プロトントンネルを期待したが、吸光度スペクトルには、トンネル等に起因した異常な吸収バンドは見出せず、局在したプロトンの振動状態のみを捉えた。


Keywords:遠赤外分光、顕微分光、電子プロトン連動、レニウム錯体


SPring-8 Section B: Industrial Application Report

2015A1677 / BL14B2
BL14B2における透過配置遠隔自動XAFSシステムの開発
Development of Remote Auto-XAFS (Transmission mode) System at BL14B2

高垣 昌史a, 井上 大輔a, 古川 行人a, 西尾 光司b, 本間 徹生a

Masafumi Takagaki a, Daisuke Inoue a, Yukito Furukawa a, Kouji Nishio b, Tetsuo Honma a

a (公財)高輝度光科学研究センター, bスプリングエイトサービス

aJASRI, bSPring-8 Service Co., Ltd.

Abstract

  BL14B2において開発を進めている遠隔XAFSシステムを統括制御するプログラム「Auto-XAFS」の開発を行った。光学調整、試料交換等を含む完全自動測定は概ね良好な動作結果を得た。


Keywords: 遠隔実験、XAFS


2014B1605 / BL46XU
異常分散X線回折法による電池正極材料LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の構造解析
Structural Study of Lithium Battery Cathode Material LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 by Anomalous Dispersive X-ray Diffraction

北原 周, 大園 洋史, 河野 研二, 世木 隆

Amane Kitahara, Hiroshi Ozono, Kenji Kono, Takashi Segi

株式会社コベルコ科研

Kobelco Research Institute, Inc.

Abstract

 Liイオン二次電池に用いられる3元系正極材 LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 の結晶構造解析を行うため、異常分散X線回折法を検討した。電池劣化の一因とされるカチオンミキシングと遷移金属元素種の関係を調べるため、NiとCoの挙動に着目し、CoとNiの K 吸収端近傍の異常分散を利用した。充放電サイクル試験前後においてNiの異常分散X線回折強度に違いがみられ、CoよりもNiの方がカチオンミキシングに影響することが示唆された。


Keywords:異常分散X線回折、二次電池正極材料、層状岩塩構造、カチオンミキシング


2014B3325, 2015A3325, 2016A3325 / BL08B2
In situ XAFSによるPd/CZO2 触媒の劣化解析
Degradation Analysis of Pd/CZO2 Catalyst by in situ XAFS

東 遥介, 高橋 照央, 藤本 智成, 末広 省吾

Yosuke Azuma, Teruo Takahashi, Tomonari Fujimoto, Shogo Suehiro

(株)住化分析センター 技術開発センター

Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center

Abstract

 Pd/CeZrO2 に代表される環境浄化触媒は、XAFSによる in situ 分析が近年盛んに行われており、価数や局所構造による評価事例が多数報告されている。近年当社は、ラボでガス流通・加熱試験が可能な in situ XRD を導入し、ビームタイムを待つことなく in situ 実験が提供できる環境を整備した。本課題ではSPring-8 BL08B2における in situ XAFS とラボで実施可能な in situ XRD を併用・比較して Pd/CeZrO2 の劣化解析を行うことで、触媒の挙動および in situ XRD の有用性を考察した。


Keywords: 環境浄化触媒,in situ分析


2014B3373, 2015B3373 / BL08B2
環境温度を考慮したリチウムイオン2次電池in situ XRD測定法の開発
Development of in situ XRD for Lithium-ion Batteries Considering Working Temperature

東 遥介, 高橋 照央, 末広 省吾

Yosuke Azuma, Teruo Takahashi, Shogo Suehiro

(株)住化分析センター 技術開発センター

Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center

Abstract

  リチウムイオン電池の充放電に対する作動環境温度の影響を解析するため、温調機能を有する in situ 測定系を構築し、高温(80°C)・低温(-10°C)におけるin situ XRD測定を実施した。各条件で室温(25°C)とは異なった活物質の構造変化が観測され、本分析法により新しい知見が得られることが示唆された。


Keywords: リチウムイオン電池,in situ 分析


2015A1006 / BL01B1
Ag含有ゼオライト蛍光体の実用化のための局所構造解析
― 水中におけるAg交換X型ゼオライトのAg局所構造 ―
Local Structure Analysis for Practical Use of Ag-containing Zeolite Phosphors
– Local Structure around Ag for Ag-exchanged X-type Zeolite in Water –

阪根 英人a, 都丸 琢斗a, 藤木 伸爾b, 杉山 公寿b

Hideto Sakanea, Takuto Tomarua, Shinji Fujikib, Koju Sugiyamab

a山梨大学, bレンゴー株式会社中央研究所

a University of Yamanashi, b Rengo Co., Ltd.

Abstract

 Ag+ 交換した種々のゼオライトの、蛍光を示す調製条件と示さないものの Ag K 吸収端EXAFSを測定した。それらのうち、水中でも蛍光を発する Ag+ 交換したX型ゼオライトについて、水中での Ag の局所構造を解析した。Ag の含有量や交換後の処理温度を変化させると蛍光スペクトルの高さは変化したが、ピークの形や位置はほとんど変化しなかった。一方、EXAFSの解析によるフーリエ変換について、強度はいくらか変化するが形はほぼ変わらず、カーブフィッティング解析した局所構造も処理温度の違いによる変化がまったくなかった。


Keywords:Ag 交換ゼオライト、蛍光体、EXAFS


2015A1671 / BL46XU
リチウムイオン電池のオペランドX線回折計測
In-Operand X-ray Diffraction Measurement of Lithium-Ion Batteries

平野 辰巳, 高松 大郊, 春名 博史, 本蔵 耕平

Tatsumi Hirano, Daiko Takamatsu, Hiroshi Haruna, Kouhei Honkura

(株)日立製作所

Hitachi, Ltd.

Abstract

 リチウムイオン二次電池の放電曲線解析による正負極利用率の減少と実際の劣化現象との対応を検証することを目的として、充放電サイクル試験後の18650型電池の充電中におけるX線回折を測定した。その結果、オペランドX線回折により、内周部ほど劣化が進行していることが明らかとなった。さらに、オペランドX線回折線の積分強度比から算出した導電ネットワークからの活物質粒子の孤立化率が、放電曲線解析による正負極利用率の減少に相当することを検証した。


Keywords: リチウムイオン電池、オペランド計測、放電曲線解析、劣化、孤立化


2015B1591 / BL17SU
PEEMによる積層セラミックコンデンサにおけるチタン酸バリウムの劣化メカニズム調査
Analysis for Degradation Mechanism of Barium Titanate in Monolithic Ceramic Capacitors Using PEEM

村木 智則, 西村 仁志, 尾山 貴司

Tomonori Muraki, Hitoshi Nishimura, Takashi Oyama

株式会社村田製作所

Murata Manufacturing Co., Ltd.

Abstract

 積層セラミックコンデンサのチタン酸バリウム誘電体層中には酸素空孔が存在し、この酸素空孔の偏析が絶縁性の使用時経年劣化を引き起こすと考えられている。そこで絶縁抵抗が劣化した積層セラミックコンデンサを用いてPEEM観察を行い酸素空孔分布の評価を試みた。誘電体層中のPEEM像から抽出したXASスペクトルより、Tiの化学状態が正極と負極の間で段階的にわずかに変化していることが示唆された。今後、この変化が酸素空孔由来か否かを検討していく。


Keywords: チタン酸バリウム、積層セラミックコンデンサ、酸素空孔、光電子顕微鏡


2017B1601 / BL10XU
圧力下における炭化イットリウムの合成と結晶構造
Synthesis and Crystal Structure Analysis of Yttrium Carbides under High Pressure

川島 健司a, 松岡 岳洋b

Kenji Kawashimaa, Takehiro Matsuokab

a(株)イムラ材料開発研究所, b岐阜大学

aIMURA Material Co., Ltd., bGifu University

Abstract

 本課題では炭化イットリウムの一種の Y2C3 の圧力下における構造と物性の確認を目的としている。今回、レーザー加熱システムを用いた試料合成によりDiamond Anvil Cell(= DAC)の試料室内に Y2C3 と他の炭化イットリウム化合物を含む混相試料を合成し、Y2C3 と炭化イットリウムの結晶構造の加圧による影響を調べた。その検証の結果、Y2C3 の Pu2C3 型構造の圧力印加に対する安定性や他の炭化イットリウム化合物の構造変化の兆候を確認した。


Keywords: 炭化イットリウム、高圧下X線回折実験、結晶構造解析


SPring-8 Section C: Technical Report

2013A1905 / BL39XU
バルク磁性体試料に対する深さ分解XMCD測定の開発
Development of Depth-Resolved XMCD Measurement for Bulk Magnets

鈴木 基寛, 保井 晃, 中村 哲也

Motohiro Suzuki, Akira Yasui, Tetsuya Nakamura

(公財)高輝度光科学研究センター

JASRI

Abstract

 蛍光X線の検出角度依存性を利用した深さ分解X線磁気円二色性 (XMCD) 測定法を開発した。表面研磨したネオジム焼結磁石試料に適用し、試料の減磁過程において Nd L2 吸収端での元素選択的磁化曲線を取得した。その結果、異なる蛍光X線検出角度、すなわち試料表面から検出深さに対して保磁力の値が変化することを見出した。得られた磁化曲線をモデルフィッティングで解析し、表面から 3.2 µm までの深さでは保磁力が試料内部の1/2に低下していることを明らかにした。本手法は、ネオジム永久磁石やサマリウムコバルト磁石等、微細組織を有する永久磁石の深さ分解磁化解析に応用が可能である。


Keywords: 深さ分解、バルク敏感、保磁力、焼結磁石