[実験目的と意義]:
ポリプロピレン(PP)シートの精密高次構造解析の一環として、配向に関する情報を得る。
[実験結果]:
異なる核剤(A、B)を添加したMFR = 2.3のランダムコポリマー(サンアロマー製)を用い、シート成形機にて0.3mm厚のシートを作製した。Through測定用サンプルはそのまま、Edge測定用サンプルはMDに沿って2mm幅に裁断したものを5枚重ねて使用した。測定は、λ=0.1nmのビーム、検出器としてCCD (SAXS、カメラ長:1734mm)、Flat Panel (WAXS、カメラ長:68mm) を用い、以下の条件(フィルター/露光時間)で実施した。
WAXS:Ag20μm/500ms(Through)、Au10μm/500ms(Edge)
SAXS:Ag20μm/200, 400ms(Through)、Ag20μm/25, 50ms(Edge)
WAXSについては、2θスキャンのプロファイルより判断し、サンプルフォルダのみの散乱に0.75を乗じたものをオリジナルデータから減じた後、定量的解析を行った。また、SAXSについては、Ag20μm/25ms(Edge)でのデータのみがCCDのダイナミックレンジの範囲であったので、これを定量的解析に使用した。
[考察]:
図1のSAXSプロファイルは、いずれのシートもラメラが成形方向に対して規則的に並んでいることを示している(長周期は約15nm)。また、核剤Aを添加した場合のみに子午線方向ストリークが観察され、成形方向に長く引き伸ばされたラメラの存在を示唆している。
図2のα(040)散乱の方位角スキャンにおいても、核剤Aを添加した場合の方が赤道上(180°)の強度分布が狭くなっており、α晶のc軸およびa*軸が、成形方向に対してより選択的に配向していることを示している。配向度の目安(非晶部の寄与を含む)である90°(子午線上)と180°の強度比は、核剤Aと核剤Bを添加したシートで、それぞれ5.5と4.3であった。
今回のシートのプロファイルは、ThroughとEdgeでほぼ同等であったことから、ラメラは成形方向に軸をもつ円筒対称の所謂row structureを形成していると推定される。この様な場合は、WAXSの2Dデータを円環積分した2θプロファイルから、結晶化度を見積もることが可能である。核剤Aと核剤Bを添加したシートのWAXSの円環積分プロファイルを比較したところ、ほぼ一致し、両者の結晶化度は同等であることがわかった。
今回の解析の結果、核剤の違いがシートの高次構造に及ぼす影響が明確になった。 |