課題情報
課題番号 2010A1779
実験課題名 粉末X線回折法を用いたリートベルト法による多相試料の定量分析法の開発と古代セラミックスの産地推定への応用[一般課題可]
実験責任者 0003307 中井 泉 (東京理科大学)
ビームライン BL19B2
タイトル
粉末X線回折法を用いたリートベルト法による多相試料の定量分析法の開発と古代セラミックスの産地推定への応用
著者
 
主著者 0003307 Nakai Izumi 東京理科大学
共著者 0014381 Osaka Keiichi (財)高輝度光科学研究センター
共著者 0024721 Abe Yoshinari 東京理科大学
共著者 0024963 Bong Shunkai 東京理科大学
共著者 0025353 Suzuki Hiroko 東京理科大学
共著者 0027551 Furuya Shunsuke 東京理科大学
本文
利用目的及び利用結果の概要

 本研究では天然鉱物組成の定量分析手法の開発に重点を置き、調製した組成既知の2~4成分系の天然鉱物の混合参照試料と人工で合成したルチルとアナターゼを測定し、Rietveld法による多相解析を行い、各鉱物相の組成比を求め、定量の正確さや精度について検討を行った。 また、その分析技術の応用例として、トルコの中央に位置するカマン・カレホユック遺跡から出土した古代セラミックスの産地推定を行った。

 人工で合成した高純度のルチルとアナターゼの2相混和物では、精度の高い定量結果が得られ、天然鉱物に関しては4相までの解析が可能であった。しかし、天然鉱物の解析では、固溶体や不純物などの影響に注意が必要であった。



• 利用方法及び利用の結果、得られた主なデータ

鉱物組成の定量精度を検討するため、構造既知の天然鉱物である輝石、角閃石、石榴石、くさび石、緑廉石と合成した高純度のルチルとアナターゼを用い、2相から4相を既知量混和し、めのう乳鉢で粉砕した後、ガラスキャピラリ(0.03 mm径)に封入しSPring-8のBL19B2ビームラインで測定した。波長1ÅのX線を用いて測定した。検出器にはイメージングプレートを用いる大型デバイシェラーカメラによる「全自動放射光粉末回折測定システム」を用いた。得られたデータはRIETAN-FP [1]を用いて多相リートベルト解析を行い、重鉱物の組成比を求め、定量の精度を検証した。

SPring-8の高エネルギー、高輝度、高指向性のX線を用いることにより、回折ピークの半値幅が狭く、多相試料の解析における信頼度因子(Rwp(%))の値のほとんどは10%以下であった。また、格子定数の差が0.03Åの二種類の石榴石が混和した二成分系試料の解析も可能であった。合成ルチルとアナターゼの2相混和物では、精度の高い結果が得られ、4相まで解析が可能であった(Fig.1)。

• 結論、考察、引用(参照)文献等

調製した組成既知2~4成分系の天然鉱物の混合参照試料を測定し、Rietveld法による多相解析を行い、各鉱物相の組成比を求め、定量の正確さや精度について検討を行った。2~4成分系の試料を測定し定量はできたが、固溶体や不純物などの影響に注意が必要であった。また、その分析技術の応用例として、トルコの中央に位置するカマン・カレホユック遺跡から出土した古代セラミックスの産地推定を行った。イメージングプレート写真を見るだけで、セラミックスに含まれている重鉱物種の分類は簡単にできその有用性を確信した(Fig.2)。



[1] F. Izumi and K. Momma, Solid State Phenom, 130, 15-20, (2007).
画像ファイル添付
Fig.1 Fig. 2