課題情報
課題番号 2008B1611
実験課題名 超臨界伸長結晶化で発見した“高分子ナノ配向結晶体”は何故約100%という異常な高結晶化度を示すのか?
実験責任者 0007421 彦坂 正道 (広島大学)
ビームライン BL40B2
タイトル
超臨界伸長結晶化で発見した“高分子ナノ配向結晶体”は何故約100%という異常な高結晶化度を示すのか?
著者
 
主著者 0007421 Hikosaka Masamichi 広島大学
共著者 0006545 Sasaki Sono (財)高輝度光科学研究センター
共著者 0009475 Okada Kiyoka 広島大学
共著者 0023296 Kimura Hideharu サンアロマー(株)
本文
[実験課題名]

超臨界伸長結晶化で発見した“高分子ナノ配向結晶体”は何故約100%という異常な高結晶化度を示すのか?



[Title of Experiment]

Origin of high crystallinity of “nano-oriented crystals” of polymers found under super critical elongational strain rate





[実験責任者 / Project Leader]

彦坂 正道 / Hikosaka Masamichi (0007421)



[ビームライン / Beamline]

BL40B2

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1.利用目的及び利用結果の概要

 われわれは最近、ポリプロピレンなどの汎用高分子を“超臨界伸長ひずみ速度場”の結晶化で生成した「ナノ配向結晶体」が、90%以上という異常に高い結晶化度を示すことを見出した。本研究の目的は、ナノ配向結晶体がなぜ高結晶化度を示すのかを、構造と形態から明らかにすることである。利用の結果、伸長方向に強く配向したナノ結晶体が、互いに密着しながら棒状の高次構造を形成しているために、高結晶化度を示すことがわかった。



2.利用方法及び利用の結果、得られた主なデータ

 試料には分子量Mw=30万、Mw/Mn=30のisotactic polypropylene (iPP)を用いた。伸長結晶化は、150℃(過冷却度37K)の過冷却液体を、伸長ひずみ速度3x102s-1で伸長することにより行った。試料をSAXSとWAXSで観察し、結晶の配向と構造を解析した。観察・解析の結果、SAXSでは伸長方向に2点像を示したことから、ナノ配向結晶体が伸長方向に配向していることがわかった(Fig.1)。また、中心から赤道方向に伸びるストリーク(Fig.1,2)の定量的解析から、直径約70nmの棒状高次構造を形成していることがわかった。

 

3.結論、考察

 “超臨界伸長ひずみ速度”場での結晶化により、約26nmのナノ配向結晶体が伸長方向に強く配向していることがわかった。棒状高次構造の太さが約70nmだったことから、伸長方向に3次元的に連なったナノ配向結晶体が2~3本束になって、高次構造を形成していることが明らかに出来た。以上の構造が、90%以上という高結晶化度を示す理由であると結論できた。この結果は超高性能高分子材料開発の基礎となるので科学的にも技術的にも興味深く重要である。



引用(参照)文献

 なし
画像ファイル添付
Fig.1 SAXS evidence for through of the orientation of "nano-oriented crystals" and rod-like higher-order structure of iPP crystallized at the "super critical elongational strain rate". Fig.2 SAXS evidnece for end of rod-like higher-order structure of iPP crystallized at the "super critical elongational strain rate".