Proposal Information
Proposal Number 2022A3741
Title of Experiment In situ analysis of cathode/solid electrolyte interface at all-solid-state battery
Project Leader 0015666 Masaaki Hirayama (東京工業大学)
Beamline BL22XU
Report Title
全固体電池動作時における正極/固体電解質界面構造の動的挙動解析
Authors
 
First Author 0015666 Hirayama Masaaki 東京工業大学
Coauthor 0013653 Kanno Ryoji 東京工業大学
Coauthor 0021923 Suzuki Kota 東京工業大学
Coauthor 0001431 Tamura Kazuhisa (国)日本原子力研究開発機構
Coauthor 0036806 Shimizu Keisuke 東京工業大学
Coauthor 0050791 Ito Kotaro 東京工業大学 
Coauthor 0050796 Yoshimoto Masataka 東京工業大学
Coauthor 0057309 Minami Motoki 東京工業大学
Body
• 利用目的
 不燃性固体電解質を用いた全固体電池は,安全性や出力特性が高いと期待される一方,電極と電解質の界面抵抗が大きい課題があるために,界面現象理解が重要となっている.我々はこれまでに薄膜モデル界面と放射光X線表面散乱回折を用いた界面構造のその場観察手法を確立してきた.本申請では,界面構造の動的変化を直接観察することで,界面層形成に由来する正極反応機構から高抵抗化メカニズムを明らかにすることを目的として,観察を行った.正極にはLiCoO2(104)エピタキシャル膜電極,電解質に非晶質Li3PO4膜,負極にはLi金属を用いたLi/Li3PO4/LiCoO2電池を作製し,全固体電池反応時における結晶構造変化を観察した.
• 試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件
RFマグネトロンスパッタリング法で,SrTiO3(001)単結晶基板上に,集電体SrRuO3(001),正極LiCoO2薄膜を積層した.薄膜の配向および膜厚を,実験室における薄膜X線回折・反射率測定で調べ,膜厚約50 nm程度のSrRuO3(001)膜,LiCoO2(104)膜がエピタキシャル成長したことを確認した.さらにRFマグネトロンスパッタリング法で固体電解質Li3PO4,真空蒸着法でLi負極を積層させることで薄膜電池を得た.薄膜電池は封止したうえで,SPring-8 BL22XU側室に設置されているアルゴン置換グローブボックス内に持ち込み,自作のX線透過型真空セルに設置し,プローブと接続した.その後,真空セルをBL22XUハッチ内に移動させ,κ型多軸回折計に設置後,真空ポンプと接続,測定時真空引きすることで,Li負極の大気劣化を抑制した.セル付属のBNC端子を通じて,薄膜電池を電気化学測定装置(SP-200, Biologic)と接続することで,充放電状態を制御した. X線のエネルギーは15 keVであり,NaIシンチレーションカウンター検出器を用いた.各充放電状態におけるout-of-plane 104, 003反射を測定した.電流値1.7 µA,カットオフ電圧3.0 - 4.2 V,および4.2 - 4.6 Vで定電流充放電を行いながら,XRD測定を実施した.測定は電池動作時(operando, 3.0-4.6 V)に実施し,充電深度を規定しながら動的な構造変化を検出した.
• 測定内容、結果の概要
  図1(a)に,カットオフ電圧3.0 - 4.2 VにおけるLiCoO2正極のout-of-plane 003反射のoperando X線回折図形を示す。充電開始時においてH = 0.4805の位置に観測されたピークが,充電電圧3.9 Vにおいて低角側に移動し,ピーク幅が広がった.これはLiCoO2正極の二相共存反応に対応し,充放電曲線の電位平坦部に一致することから,定電流充放電時の動的構造の観測に成功した.二相共存を示す構造変化は充放電曲線の電位平坦部と一致しており,LiCoO2正極の構造変化は充放電反応の律速ではないことが示唆された.充電電圧が4.0 V → 4.2 Vと高くなるにつれて、003反射がリチウム脱離よりピークが低角側に移動した.これは酸素間静電反発によるc軸方向の格子膨張に対応する。放電時には充電時と逆の回折図形の変化を示し,LiCoO2正極が可逆的に構造変化したことが観測された.また顕著な強度変化は観測されず,界面劣化は認められなかった.図1(b)に,カットオフ電圧4.2 - 4.6 VにおけるLiCoO2正極のout-of-plane 003反射のoperando X線回折図形を示す。4.4 V以上ではリチウム脱離による格子体積減少効果が大きくなり,高角側にピークがシフトした。図1(c)に,カットオフ電圧3.0 - 4.6 VにおけるLiCoO2正極のout-of-plane 104反射のoperando X線回折図形を示す。顕著なピークシフトは観測されなかったものの,充電深度に伴う強度変化が観測された.これは充放電反応中に構造変化を起こさないSrRuO3の 002反射と重複したLiCoO2の104反射が,六方晶から単斜晶への構造転移に伴い,基板面との平行性を失い,ピークが消失したためと考えられる.図1(d)に,図1(a),(c)の結果を用いて算出した,LiCoO2正極の格子定数および格子体積を充電深度に対するプロットを示す.c軸方向の膨張に伴って,格子体積の膨張が観測されたが,その変化量は粉末試料での報告値よりも小さいものとなった.反射率実験から正極膜厚の変化は観測されておらず,膜厚変化による界面の接合性悪化が抑制され,全固体電池の良好なサイクル特性に寄与している可能性が示唆された.
以上より,全固体電池動作時の正極/固体電解質界面における結晶構造変化の動的なその場観察に成功し,RFマグネトロンスパッタリング法を用いて作製したLiCoO2エピタキシャル膜は,良好なサイクル特性を示し,構造転移は速やかかつ可逆的に進行していることを明らかにした.
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