Proposal Information
Proposal Number 2021B3738
Title of Experiment In situ analysis of electrode/solid electrolyte interface at all-solid-state battery
Project Leader 0015666 Masaaki Hirayama (東京工業大学)
Beamline BL22XU
Report Title
全固体電池動作時における正極/固体電解質界面構造の動的挙動解析
Authors
 
First Author 0015666 Hirayama Masaaki 東京工業大学
Coauthor 0013653 Kanno Ryoji 東京工業大学
Coauthor 0021923 Suzuki Kota 東京工業大学
Coauthor 0001431 Tamura Kazuhisa (国)日本原子力研究開発機構
Coauthor 0036806 Shimizu Keisuke 東京工業大学
Coauthor 0050796 Yoshimoto Masataka 東京工業大学
Coauthor 0050791 Ito Kotaro 東京工業大学 
Coauthor 0054040 Maeda Daisuke 東京工業大学
Body
• 利用目的
 不燃性固体電解質を用いた全固体電池は,安全性や出力特性が高いと期待される一方,電極と電解質の界面抵抗が大きい課題があるために,界面現象理解が重要となっている.我々はこれまでに薄膜モデル界面と放射光X線表面散乱回折を用いた界面構造のその場観察手法を確立してきた.本申請では,酸化物正極/硫化物固体電解質の界面に着目し,界面修飾層Li-Nb-Oの化学組成の違いが正極の結晶構造変化に与える影響を調べた.正極にはLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(104)エピタキシャル膜電極,電解質に非晶質Li3PS4膜,負極にはLi金属を用いたLi/Li3PS4/Li-Nb-O/ LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2電池を作製し,全固体電池反応時における結晶構造変化を観察した.特に界面抵抗の増大が課題となっている高電位領域におけるリチウム脱挿入反応におけるLi-Nb-O組成の影響を明らかにすることを目的とした.
• 試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件
パルスレーザー堆積法で,SrTiO3(001)単結晶基板上に,集電体SrRuO3(001),正極LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2薄膜,Li-Nb-O修飾膜を積層した.薄膜の配向および膜厚を,実験室における薄膜X線回折・反射率測定で調べ,膜厚約30 nm程度のSrRuO3(001)膜,LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(104)膜がエピタキシャル成長し,修飾層は10 nm程度の非晶質膜であることを確認した.さらにパルスレーザー堆積法で固体電解質Li3PS4,真空蒸着法でLi負極を積層させることで薄膜電池を得た.は薄膜電池は封止したうえで,SPring-8 BL22XU側室に設置されているアルゴン置換グローブボックス内に持ち込み,自作のX線透過型真空セルに設置し,プローブと接続した.その後,真空セルをBL22XUハッチ内に移動させ,κ型多軸回折計に設置後,真空ポンプと接続,測定時真空引きすることで, Li負極およびLi3PS4電解質の大気劣化を抑制した.セル付属のBNC端子を通じて,薄膜電池を電気化学測定装置(VSP-200, Biologic)と接続することで,充放電状態を制御した. X線のエネルギーは15 keVであり,NaIシンチレーションカウンター検出器を用いた.測定電圧は3.0 V~4.6 Vとした.各充放電状態におけるout-of-plane 104, 003およびin-plane 2-10,10-8反射を測定した.走査速度2 mV/sで電圧まで変化させ,電圧を保持,電流が減衰したのちに XRD測定を実施した.測定は充電3.8 V, 4.0 V, 4.2 V, 4.6 Vおよび放電3.0 Vで実施した.さらに電位走査時におけるピーク強度変化を同時に追跡することで,動的な構造変化を検出した.
• 測定内容、結果の概要
  図1(a,b)にLi-Nb-O (Li/Nb>1)を界面修飾したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極のout-of-plane 003反射とin-plane 2-10反射のX線回折図形を示す。充電電圧が3.8 V→ 4.0 V → 4.2 Vと高くなるにつれて、003反射がリチウム脱離よりピークが低角側に移動した.これは酸素間静電反発によるc軸方向の格子膨張に対応する。4.4 V以上ではリチウム脱離による格子体積減少効果が大きくなり,高角側にピークがシフトした。2-10反射については,充電時に顕著なピーク形状の変化が観測されなかった.図1(c,d)にLi-Nb-O (Li/Nb<1)を界面修飾したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極について,同条件で得られたX線回折図形を示す。Li/Nb比が大きい試料と同様に,充電時に003反射が4.2 Vまでは低角側に,4.4 V以上では高角側に移動した。一方,4.6 Vにおける反射位置はH = 0.0478とより高角側に観測された.Li/Nb比が大きい試料よりも多くのリチウムが構造内から脱離したことを表す.In-plane 2-10反射についても充電時に高角域に現れるリチウム脱離相の回折強度が大きくなり,多くのリチウムが構造内から脱離したことが確認できた.10サイクル放電後の003,2-10回折強度については,Li/Nb>1およびLi/Nb<1いずれも初回放電時と比べて顕著な強度減少は観測されず,LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極の界面劣化は認められなかった.さらに,回折強度の時間変化から動的な挙動を調べたところ,充電時,放電時ともにLi/Nb比による違いは観測されなかった.これより,いずれの修飾層においてもLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極は可逆的に反応が進行し,反応の律速は正極内へのリチウム脱挿入ではなく,修飾層および固体電解質側界面におけるリチウムイオン移動にあることが示された.Li/Nb比によるLi-Nb-O層のイオン導電性や電気化学安定性の違いにより,充放電時に形成される界面構造が変化し,リチウム脱挿入反応が変化したと考えられる.以上より,全固体電池動作時の正極/固体電解質界面における結晶構造変化のその場観察に成功し,修飾層材料による電極特性の違いから,高電位領域では正極自身の劣化ではなく,修飾層や電解質層の高抵抗化により,正極特性が低下することを明らかにした.
Attachment
図1 Li-rich Li-Nb-O (a,b)またはLi-poor Li-Nb-O (c,d)を表面修飾したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(104)膜電極のin situ XRD図形.(a, c) out-of-plane 003, (b) in-plane 2-10. Not attached.
Not attached.