【利用目的】 エポキシ樹脂の構造と性能の関係を理解するうえで架橋構造の不均一性の解析が課題となっている。近年の研究より、X線光子相関分光法(XPCS)を使うことで架橋構造の微視的なダイナミクスを捉えることが可能となり、架橋構造の不均一性を解析する強力な手段になると考えられている[1]。この手法では材料の緩和挙動を捉えるため、測定温度や測定間隔(時間)の設定がポイントとなる。また散乱コントラストを得るためにシリカ微粒子を添加するため、その添加量もポイントとなる。そこで我々は代表的な2官能エポキシ樹脂であるDGEBA(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)の硬化物を使ってXPCS実験に最適な測定条件の探索を行った。
【試料名、実験方法、使用装置、実験測定条件】 ○ 試料名:DGEBA硬化物 硬化剤:4,4’DDS(ジアミノジフェニルスルホン) シリカ添加量:0%, 1% ○ 実験方法:XPCS ○ 使用装置:BL03XU第2ハッチ ○ 実験測定条件 ・波長:1Å ・カメラ長:約8m ・検出器:EIGER ・露光時間と測定間隔は緩和現象が捉えられるように調整した ・frame数:500 ・温度:100℃から250℃で調整した
【測定内容、結果の概要】 典型的な自己相関関数を図に示す。シリカ添加量1%、露光時間0.1sec、測定間隔2.0sec、測定温度230℃とした。この条件であれば自己相関関数が時間の経過とともに明確に減衰することが確認され、緩和挙動が十分に捉えられていると考えている。なおシリカ添加量を0%にすると緩和挙動は捉えらなかったことから、マーカーとしてシリカ粒子が必要であることが分かった。 一方、測定の再現性が確認できない場合があり、測定中の試料のドリフトや温度変化、さらには測定中の硬化の進行などが考えられる。ドリフトの抑制や温度変化を抑制するために試料ホルダに改良を加えた測定も実施しており現在解析中である。
【参考資料】 [1] T. Hoshino, Y. Okamoto, A. Yamamoto, H. Masunaga, Sci. Rep. 11, 9767 (2021). |