Proposal Information
Proposal Number 2019A3635
Title of Experiment In situ observation of cathode/sulfide type electrolyte interface structure at all-solid-state battery by surface X-ray diffraction
Project Leader 0013653 Ryoji Kanno (東京工業大学)
Beamline BL14B1
Report Title
表面回折法による全固体電池動作下における正極/硫化物固体電解質界面構造の直接観察
Authors
 
First Author 0013653 Kanno Ryoji 東京工業大学
Coauthor 0001431 Tamura Kazuhisa (国)日本原子力研究開発機構
Coauthor 0015666 Hirayama Masaaki 東京工業大学
Coauthor 0021923 Suzuki Kota 東京工業大学
Coauthor 0050796 Yoshimoto Masataka 東京工業大学
Coauthor 0048215 Takahashi Akinobu 東京工業大学 
Coauthor 0036806 Shimizu Keisuke 東京工業大学
Coauthor 0048205 Takano Ryoma 東京工業大学 
Body
1.概要
エピタキシャルLiCoO2正極膜と非晶質Li3PS4電解質膜からなる薄膜電池Li/Li3PS4/LiNbO3/LiCoO2/Liを作製し,全固体電池反応時におけるLiCoO2電極の結晶構造変化をその場観察した.これまでの測定ではin situ X線回折測定中の電気化学動作に課題があったが,19A期では電気化学端子や薄膜電池の形状を見直すなどセルを改善することで結晶構造変化と電気化学応答との関連が測定可能とした.In situ XRD測定と電気化学測定の結果より, 初回充電放電時に電極表面が変化していることが示唆された. 今後,詳細な解析を推し進めることで,固体/固体界面におけるリチウム拡散現象や酸化物正極/硫化物固体電解質界面の高抵抗化の解明が期待される.
2.実験方法
SrTiO3(100)基板上にパルスレーザー堆積法でSrRuO3(100)集電体を作製したのち,エピタキシャル LiCoO2(104)膜を650 °Cで積層した. XRDからエピタキシャル成長は確認済である.X線反射率測定からLiCoO2の膜厚は約30 nmであった.パルスレーザー堆積法で修飾層LiNbO3と固体電解質Li3PS4を積層後[1],最上面に真空蒸着法で負極Liを堆積させることで薄膜電池とした.薄膜電池内の結晶構造変化のその場観察は,真空型電気化学セルを用いて充放電中に放射光X線回折で測定をした.測定はSPring-8 BL14B1に設置された多軸回折系,およびNaIシンチレーションカウンター検出器を用いて行った.X線エネルギーは15 keVとした.試料はグローブボックス内で電気化学セルに固定した後,電気化学測定用の端子を配置した.ポテンショスタット(BioLogic社製)を用いて電圧を規制することで充放電状態を制御した.測定電圧は3.0 V~4.6 Vとした.各充放電状態における104, 003,10-8反射を測定した.走査速度2~5 mV/sで電圧まで変化させ,電圧を保持,電流が減衰したのちに XRD測定を実施した.構造の時間変化測定においては,リニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定と同時に回折測定を開始し, 電位到達後はクロノアンペロメトリーで電位を保持しながら回折測定を続けた.
3.結果と考察
図2に1サイクル目の充放電過程におけるLiCoO2のout-of-plane 003反射, in-plane 10-8反射付近のin situ X線回折図形を示す. Out-of-plane 003反射では充電時に回折ピークが低角側にシフトし,Li脱離に伴うc軸方向への格子膨張が観測された [2,3]. 放電時には可逆的にピークシフトし,充放電前後のピーク位置および回折強度は充放電前と一致した(図2a).正極内部ではLi脱挿入に伴い可逆的に結晶構造が変化したと考えられる.In-plane 10-8反射は,バルク(図2b),表面(図2c)ともに充電時にピーク位置は低角に移動しながら,回折強度が減少した. 4.0 VではH = 1.91, 4.2 VではH = 1.90付近に新たな反射が観測された.この低H側反射の相対強度比はバルク領域で高く,表面領域では低いことから,バルクと表面でLi脱離反応時の結晶構造が異なることが分かった.既報より,菱面体晶Li1-xCoO2 (x = 0)からx = 0.1程度Liが脱離したのち,単斜晶との2相共存状態でLiがさらに脱離する[3].このとき,c軸方向に格子が膨張し,ab軸方向への格子変化は小さい.これより,H = 1.90~1.91の回折ピークを単斜晶相,H ~ 1.93の回折ピークを菱面体晶相と同定した.充電前のLiCoO2H =1.935)に対する菱面体晶の相対回折強度はバルク,表面ともに同程度である一方,単斜晶相の相対回折強度は表面付近で小さくなった.表面近傍では単斜晶相へのLi脱離が進行しにくいことや,結晶構造の規則性に乱れが生じている可能性がある.初回放電後3.2 Vでは10-8反射はバルク,表面ともに充放電前と同じピーク位置に可逆的にシフトした.バルク回折に対して表面回折では大きな強度低下が観測されたことから,初回サイクル時にLiCoO2表面の一部が別の相に不可逆的に転移したことが示唆された.図1で観測された初期サイクル時の反応抵抗の増大に関連している可能性がある. 以上より,エピタキシャル膜モデル界面を用いて,硫化物型全固体電池の界面結晶構造変化のその場測定に成功した.本手法により,全固体電池の課題である正極/硫化物固体電解質界面の高抵抗化の抑制に向けた知見が得られると期待される.

参考文献(References)
[1] Z. Quan et al., J. Am. Ceram. Soc., 100 (2017) 746-753.
[2] X.Q. Yang et al., Electrochem. Comm., 2 (2000) 100-103.
[3] G.G.Amatuci et al., J.Electrochem. Soc., 143(1996) 1114-1123.
Attachment
LiCoO2(104)膜のIn situ XRD図形.(a) out-of-plane 003 (bulk), (b) in-plane 10-8 (bulk), (c) in-plane 10-8 (surface). Not attached.
Not attached.