利用目的: 金属材料を輸送機や社会インフラに適用する上で, 機械特性に加えて耐食性に優れた材料が強く求められている. 一般に, 腐食の発生及び成長挙動は材料の置かれる環境や添加元素, 組織, 結晶方位, 腐食生成物などの違いにより変化することは知られている. しかしながら, 本現象は微細領域での不均一反応であることから, ,定性的な理解にとどまっており, 抜本的な防食対策を行うためには, 定量的な腐食メカニズム解明の取り組みが必要である. 本研究では, 鉄鋼材料を対象に, 腐食環境が初期の腐食生成物に及ぼす影響について放射光測定及び計算科学によるデータ解析を組み合わせて検討を行った. 試料名、実験方法、使用装置、測定条件: 試験片は市販のSPCCを用いた. 本材料を20×50 mmに切断し, #600まで湿式研磨後, アセトン洗浄を施しTable 1に示す条件にて腐食試験を行った. 腐食させた試験片に対し, BL08B2においてFe K吸収端を用いて2D-XAFS測定を実施し, 得られたスペクトルをLarch ライブラリ及びNFM-SO法を用いて解析した. なお材料表面に生成した錆の比較検討を行うため, 表面敏感である転換電子収量法を用いて測定を行った. 測定内容、結果の概要: Fig.1に腐食時間を変化させた時のXANESスペクトルの変化を示す. 腐食期間の増加とともに7110eV付近のpre-edge及び7130eV付近のホワイトライン部にピークシフトが起こっており, これはFeが腐食され3価のイオンに変化していることを示す.次にFig. 2に腐食3時間後の2D-XAFSマッピング結果を示す. なおcompensate 1は表面の酸化状態及び構造状態を表し, 値が1に近づくほど鉄錆であることを示す. XANESマップより鋼材表面では酸化状態にムラがあることが判り, さらにFT-DRFマップよりXANESでは同様の酸化状態を示す箇所でも, 構造は必ずしも同一でないことが判る. |