• 利用目的 アスファルテンの凝集体は, メソスケール域のサイズ領域にある. これに加え, アスファルテンは分子レベルの一次凝集体がさらにフラクタル的に高次階層構造を形成していると考えられる. アスファルテンの強凝集へのプロセスの理解には, このフラクタル的な高次凝集挙動を解明することが必須と考える. 近年, 高次階層構造の解析の重要性が認識され, 世界的に小角と極小角散乱測定が精力的に行われるようになってきている. 以上から, 本申請課題の目的は, 小角散乱と極小角散乱法によりアスファルテン凝集体について, 高温高圧下や各種溶媒中における高次階層構造を含めた凝集構造を解析することである. 本申請では, 系統的かつ一般性ある解釈を得るため二種類のアスファルテン試料を用いて常温常圧下での様々な溶媒中での構造解析と高温高圧下での熱力学状態を変化させた条件下でのアスファルテン凝集緩和挙動を検討することとした.
• 試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件 1, 高温高圧下での測定(小角散乱のみ) 等温条件下圧力依存性: 150, 225, 300 °Cに対して、それぞれ常圧から30MPa アスファルテン濃度:50,000 mg/L 溶媒:トルエン
2, 常温常圧での測定条件(小角散乱と極小角散乱) 溶媒依存性: トルエン系, ブロモベンゼン系 アスファルテン濃度:50,000 mg/L
光学系はBL19B2に設置されている小角と極小角X線散乱測定光学系を用いた. X線エネルギーは, ブロモベンゼン系の吸収特性から, 特別に13 keVとして調整頂いた. 高温高圧条件下での測定では, 高温高圧測定用のチタン製の試料ホルダーを申請グループが持ち込み, 光学系の試料位置にセット して測定を実施した. 溶媒種依存性については, 常温常圧下での測定となるため, Φ1.5mmの石英製キャピラリーに溶液をセットし, 大坂 恵一 先生が考案された全自動測定システムを用い, 実験時間を有効利用し多数の溶液に対する測定を実施した.
• 測定内容、結果の概要 高温高圧下において良好な圧力依存性のシグナルの取得に成功し, これにより詳細な溶媒密度依存性の議論が可能となった. 常温常圧下での測定では, ブロモベンゼン系に対しても小角から極小角までのシグナルを測定することができ, 今まで実施した測定と合わせ, 小角から極小角域までの広範な角度域でのシグナルにて議論が可能となった. 最も懸案となる極小角域のフラクタル的に強凝集した成分の詳細な解析に, 十分資するデータを取得することに成功した.
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