• 利用目的 一方向炭素繊維強化プラスチック(UD-CFRP)は金属材料に比べて比剛性や比強度に優れるため,軽量化を目的として航空機構造部材に使用されており,今後は自動車構造への応用が期待されている.しかしながら,その優れた特性は引張特性に関してであり,圧縮強度は引張強度の約50 %程度しかない.UD-CFRPの圧縮破壊は炭素繊維の微小座屈に起因したキンクバンド破壊であるが,この圧縮破壊の起点や破壊進展様相を詳細に観察した報告はない. そこで本課題では,UD-CFRPの内部微視構造をSpring-8を用いて高解像度で取得することにより,圧縮破壊の起点について調査することを目的とした.繊維方向圧縮負荷中にUD-CFRPの内部撮影を行い,外部のみならず内部における破壊現象を明らかにする.また,取得した断層画像をもとにミクロスケールでの不確定性,すなわちそれぞれの炭素繊維のうねりを考慮にいれた3次元モデルを構築して,実験的のみならず解析的にも圧縮破壊の起点について明らかにすることが最終目的である.
• 試料名,実験方法,使用装置・実験測定条件 測定試料は強化材に炭素繊維,母材にエポキシ樹脂を用いた炭素繊維強化プラスチックの円柱である.この測定試料の両端にアクリル製のタブを接着したものを圧縮試験片とした.この圧縮試験片を専用の圧縮試験治具に装着して,圧縮負荷を行った.圧縮試験治具はアクリル円筒をベースとして,マイクロメータヘッドを使用して測定試料に圧縮負荷をする機構とした.測定試料の寸法は,直径約0.2 mm,全長約15mmである.まず,無負荷状態にて測定試料の撮影を行った.その後,荷重を負荷した状態で撮影を行った.更に荷重を少し増大させ,撮影を行った.この手順を測定試料が圧縮破壊するまで繰り返し行った.
• 測定内容,結果の概要 圧縮試験治具にアクリル円筒を使用しており,圧縮負荷を増大させながらの撮影のために測定時間が長時間となると,アクリルが劣化して治具が破損する現象が生じた.また,クリアランスの差によりUD-CFRPの典型的な圧縮破壊モードであるキンクバンド破壊とならない場合が生じた.以上のアクシデントが発生したが,合計6本の試験片について撮影に成功した.この6本の試験結果について,現在はその断層画像からそれぞれの炭素繊維のうねりを再現した3Dモデルを構築している.このモデルを用いて圧縮破壊の起点について解析を行っていく予定である. |