[概要] 我々は、光ビームプラットフォーム参画する各放射光施設の特徴抽出を目指し2016年11月より硬X線を扱う4機関(SPring-8, Photon Factory, SAGA-LS, あいちSR)でX線吸収分光測定(XAS)ラウンドロビン実験を開始した。 この一環として今回は、1-1000 ppm程度の希薄濃度試料を用いた蛍光XASラウンドロビン測定を実施し各放射光施設での検出濃度限界を検討することが目的である。 [背景] XAS測定は試料の化学状態や局所構造について元素選択的にかつ試料の状態を問わず調べることができるため、多様な研究分野で用いられている測定手法である。 そのため各放射光施設ではXAS測定専用ビームライン(BL)が複数配備されており、ユーザーは目的に応じて使用する放射光施設やBLを選択もしくは複数利用することが行われている。 この様なユーザーが適切な実験施設を選択する際に必要な情報としては、測定できる元素(エネルギー範囲)、測りたい試料のXAS測定に要する時間(各施設やBLのフラックスに関連する知見)や検出下限濃度、エネルギー分解能などが挙げられる。 しかし、各放射光施設・BL間でこれらの情報に関する相互比較は十分に行われていない。 このような背景を踏まえて申請者らは、硬X線を用いたXAS測定のラウンドロビン実験を行っている。本課題ではユーザーからの要望が多い項目である低濃度試料の検出下限に関する検討を行った。CuOを標準試料として選択し、 [実験] 実験はすべてBL14B2で実施した。蛍光XAS測定には、BL14B2に整備されている19SSDを使用した。蛍光XAS測定は大気圧・室温で実施した。 標準試料として、CuO, Cu2Oを選択した。標準試料の選択にあたっては ② 数か月に渡り大気中で安定、 ②ユーザーからのニーズが高いエネルギー領域を有する、 ③どの放射光施設においてもXAS測定ができる、 ④吸収端近傍にピークを有するといった点を考慮した。 BNで希釈されたペレット状の試料を用い、試料濃度は1, 10, 100, 1000 ppmを目標に調整を行った。 SPring-8 BL14B2が配備する半導体検出器を用いて、データ取得を行った。測定はいわゆるStepスキャンによる測定モードにて実施した。 [結果] 図1には、CuのXANESスペクトルを示す。試料濃度に依らず、標準試料と同様のスペクトルが得られた。 今回の結果に加えて、我々は同一試料を用いたXASラウンドロビン実験をPhoton Factory (BL9A), あいちSR(BL11S2, BL05S1), SAGA-LS(BL11)で実施した。 今後各施設で得られたXASスペクトルを比較することで、各施設の検出濃度の限界に関する情報をまとめる予定である。 |