課題情報
課題番号 2017A1781
実験課題名 XAFSスペクトル測定法標準化のための基礎的検討(2)
実験責任者 0025706 渡辺 剛 ((公財)高輝度光科学研究センター)
ビームライン BL14B2
タイトル
XAFSスペクトル測定法標準化のための基礎的検討(2)
著者
 
主著者 0025706 Watanabe Takeshi (公財)高輝度光科学研究センター
共著者 0017583 Setoyama Hiroyuki (公財)佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター
共著者 0029852 Kimijima Kenichi 高エネルギー加速器研究機構
共著者 0028588 Ikeno Norihiro (公財)科学技術交流財団
共著者 0011479 Nishio Kouji スプリングエイトサービス(株)
本文
概要:本申請課題は2016年11月より光ビームプラットフォーム事業の一環として行っている、XAFS測定のラウンドロビン実験の継続課題である。今回の実験では他の放射光施設でXAFS測定してきた同一試料を測定・比較することで、施設間で得られたスペクトルとの互換性、エネルギー校正の妥当性などを検討することが目的である。今回はK吸収端が18 keV以上の材料を中心にXAFS測定を行った。

目的:XAFS測定は試料の化学状態や局所構造について元素選択的にかつ試料の状態を問わず調べることができるため、多様な研究分野で用いられている測定手法である。そのため大半の放射光施設では複数のXAFS測定専用ビームラインが配備されている状況である。この結果、我々が支援する産業界では必要に応じてSPring-8、SAGA-LSやAichi-SRといった複数の放射光施設を横断的・相補的に利用する事例が多くなってきている。しかし、現状では各施設間で光学系や測定条件、計測方法といった「お手前」が異なるため、他施設で測定したXAFSスペクトルを同等に取り扱うことができず、研究者間でデータを比較することができない事例が発生している。この原因として、今まで各施設間でのスペクトルの互換性を検討した例がないだけでなく、これを担保するために標準化すべき計測手順やパラメータもわかっていないことが理由として挙げられる。
このような背景を踏まえて申請者らは、「産業界ユーザーを見据えたXAFS測定の標準化」の第1歩としてラウンドロビン実験を2016年度より開始した。このラウンドロビン実験は、各施設で取得したスペクトルを比較することで、各放射光施設BL間でのスペクトルの互換性、エネルギー校正法の妥当性などを検討することが目的である。2016年度は、Photon Factory BL12C, SPring-8 BL14B2、 あいちSRセンター BL5S1, BL11S2、立命館大SRセンター BL4、九州シンクロトロン光科学センター BL07、BL11において透過法によるXAFS測定のラウンドロビン実験を行ってきた。SPring-8での実験に関しては、18 keV以上にK吸収端のエネルギーを持つ材料に関しては未だにXAFSスペクトルが取得できていない。このため18 keV以上では、上で述べたような比較や検討ができていない。
そこで今回はMo, Pd, Ag, Sn, IのK吸収端XAFS測定を行い、各施設間と比較するために必要となるXAFSスペクトルを取得した。加えて、LaやWなど比較的高エネルギーにK吸収端を持つ材料のXAFSスペクトルも併せて取得した。

実験:実験はBL14B2で行った。実験試料はCu, Mo, MoO2, Pd, PdO, Ag, AgO, Sn, SnO, KI, LaB6, W, WO3を使用した。試料形状はBN粉末と混合したペレット状もしくは箔状とし、透過法にてXAFS測定を行った。検出器にはイオンチャンバーを使用した。分光器にはSi(111)およびSi(311)を用い。測定はQuick, Stepスキャンの2つのモードで各試料を測定した。測定はすべて大気圧・室温で行った。

結果:各試料において、明瞭なXAFSスペクトルが取得できた。これにより他施設間とのデータの比較が可能となった。さらに今後はPFでも18 keV以上にK吸収端のエネルギーを持つ材料に関するラウンドロビン実験が計画されている。これらの結果も併せて検討することでXAFS標準化に向けた第一歩を踏み出す。
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