課題情報
課題番号 2017A1564
実験課題名 PtCo(111)合金単結晶電極表面の窒素および酸素雰囲気における電気化学環境下でのその場表面X線散乱
実験責任者 0024095 犬飼 潤治 (山梨大学)
ビームライン BL46XU
タイトル
窒素雰囲気下過塩素酸水溶液中におけるPt75Co25(111)合金電極表面のin-situ CTR構造解析
著者
 
主著者 0024095 Inukai Junji 山梨大学
共著者 0001430 Kondo Toshihiro お茶の水女子大学
共著者 0041010 Kobayashi Shun 山梨大学
共著者 0035178 Suda Kohei 山梨大学
共著者 0044069 Kawamoto Teppei 山梨大学
共著者 0040934 Wakisaka Mitsuru 富山県立大学
共著者 0042825 Akiyama Tomohiro 田中貴金属工業(株)
本文
• 利用目的
 固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、小型、高出力密度といった特性から、家庭用コジェネレーションシステムや燃料電池車用電源として利用が開始されている。今後の本格普及のためには、さらなる高性能化、高耐久化、コストダウンが必須である。とりわけ、高価なPt触媒が用いられる空気極において酸素還元反応(ORR)の過電圧ロスが大きく、空気極触媒の高活性化が必要不可欠である。Pt-CoなどのPt合金触媒が高いORR活性を有することが、これまで申請者グループをはじめ多くの研究者によって見出されてきた。実用触媒にはナノ粒子触媒が用いられているが、さらに高活性なPt合金電極触媒の設計指針を得るためには、構造規制された単結晶を用いた研究が効果的である。PtCo合金触媒のORR活性はCo組成と指数面に強く依存することが明らかとなった一方、その活性向上メカニズムは未だ不明である。
 本研究においては、環境制御を行うためにカプトンドームを新たに導入し、窒素雰囲気下0.1 M HClO4中、Pt75Co25(111)電極表面のCTR測定をBL46XUで行った。その後、各層の組成解析を行った。

• 試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件
1.Pt-Co合金単結晶ディスク試料の作製
 試料合金単結晶は事前に申請者の研究室で作製した。Pt種結晶にCo線を添加し、両者を同時に溶融・冷却することでPt75Co25固溶合金単結晶ビーズを得た。単結晶ビーズから(111)面を切り出し、測定用にディスク加工(直径3.5 mm程度)した。作製した合金単結晶のCo組成並びに結晶性は事前に研究室でXPSとXRDを用いて確認した。
2. Pt-Co合金単結晶表面の前処理
 PtCo合金単結晶の最終表面調製は化学試料準備室にて行った。表面調製は卓上赤外線イメージ加熱炉内にて水素雰囲気下、加熱冷却することで行った。前処理した単結晶電極は、SXSダイナミクス測定用溶液フロー電気化学セルにセットした。電解質溶液には0.1 M HClO4を用いた。
3. CTRその場測定
単結晶試料電極がセットされた電気化学セルは、既存の多軸回折計に装着した。山梨大学で作製した台座に電気化学SXSセルを取り付け、カプトン製小型容器で密封した。カプトン製チャンバー内部は、純窒素で満たした。X線の検出は、ビームライン既設のシリコンドリフト検出器(SDD)を用いた。
 Pt75Co25(111)合金試料について、水素吸着や表面酸化の起きない電気二重層領域(可逆水素電極で0.4 V)に電位を保持し、溶液層の厚みを30 umと薄くしてから(00)ロッドのCTR測定を行った。

• 測定内容、結果の概要
 図1に (00)ロッド測定結果を示す。赤丸はデータ、点線はフィッティングである。電極表面に過塩素酸イオンだけの吸着層があり、その下は表面第1層から第4層までのPt:Co比を変化させた。表面結晶性が低く、Braggピークがいくつかに分かれた。それらをフィッティングしためエラーバーが大きい。図2にフィッティングから得られたCo組成プロファイルを示す。1層目はPt組成が98%、2層目はCo組成が98%となっており、表面2層で組成が分離されている、大変特徴的な構造が得られた。
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