• 利用目的 固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、小型、高出力密度といった特性から、家庭用コジェネレーションシステムや燃料電池車用電源として利用が開始されている。今後の本格普及のためには、さらなる高性能化、高耐久化、コストダウンが必須である。とりわけ、高価なPt触媒が用いられる空気極において酸素還元反応(ORR)の過電圧ロスが大きく、空気極触媒の高活性化が必要不可欠である。Pt-CoなどのPt合金触媒が高いORR活性を有することが、これまで申請者グループをはじめ多くの研究者によって見出されてきた。実用触媒にはナノ粒子触媒が用いられているが、さらに高活性なPt合金電極触媒の設計指針を得るためには、構造規制された単結晶を用いた研究が効果的である。PtCo合金触媒のORR活性はCo組成と指数面に強く依存することが明らかとなった一方、その活性向上メカニズムは未だ不明である。 本研究においては、環境制御を行うためにカプトンドームを新たに導入し、窒素雰囲気下0.1 M HClO4中、Pt75Co25(111)電極表面のCTR測定をBL46XUで行った。その後、各層の組成解析を行った。
• 試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件 1.Pt-Co合金単結晶ディスク試料の作製 試料合金単結晶は事前に申請者の研究室で作製した。Pt種結晶にCo線を添加し、両者を同時に溶融・冷却することでPt75Co25固溶合金単結晶ビーズを得た。単結晶ビーズから(111)面を切り出し、測定用にディスク加工(直径3.5 mm程度)した。作製した合金単結晶のCo組成並びに結晶性は事前に研究室でXPSとXRDを用いて確認した。 2. Pt-Co合金単結晶表面の前処理 PtCo合金単結晶の最終表面調製は化学試料準備室にて行った。表面調製は卓上赤外線イメージ加熱炉内にて水素雰囲気下、加熱冷却することで行った。前処理した単結晶電極は、SXSダイナミクス測定用溶液フロー電気化学セルにセットした。電解質溶液には0.1 M HClO4を用いた。 3. CTRその場測定 単結晶試料電極がセットされた電気化学セルは、既存の多軸回折計に装着した。山梨大学で作製した台座に電気化学SXSセルを取り付け、カプトン製小型容器で密封した。カプトン製チャンバー内部は、純窒素で満たした。X線の検出は、ビームライン既設のシリコンドリフト検出器(SDD)を用いた。 Pt75Co25(111)合金試料について、水素吸着や表面酸化の起きない電気二重層領域(可逆水素電極で0.4 V)に電位を保持し、溶液層の厚みを30 umと薄くしてから(00)ロッドのCTR測定を行った。
• 測定内容、結果の概要 図1に (00)ロッド測定結果を示す。赤丸はデータ、点線はフィッティングである。電極表面に過塩素酸イオンだけの吸着層があり、その下は表面第1層から第4層までのPt:Co比を変化させた。表面結晶性が低く、Braggピークがいくつかに分かれた。それらをフィッティングしためエラーバーが大きい。図2にフィッティングから得られたCo組成プロファイルを示す。1層目はPt組成が98%、2層目はCo組成が98%となっており、表面2層で組成が分離されている、大変特徴的な構造が得られた。 |