課題情報
課題番号 2013B7257
実験課題名 高性能高分子材料の構造形成と物性発現機構の解明
実験責任者 0026918 山竹 邦明 (昭和電工(株))
ビームライン BL03XU
タイトル
耐衝撃ポリプロピレン材料の透明性発現要因の解明
著者
 
主著者 0028152 Maruyama Masanori サンアロマー(株)
共著者 0028153 Mizutani Yoko サンアロマー(株)
共著者 0009853 Kajioka Hiroshi サンアロマー(株)
共著者 0024705 Tagashira Katsuharu サンアロマー(株)
共著者 0027269 Sakai Kazuhiko サンアロマー(株)
共著者 0009475 Okada Kiyoka 広島大学
共著者 0007421 Hikosaka Masamichi 広島大学
本文
[緒言] 耐衝撃特性を改善する目的で、マトリックス相に対し10~30 wt%程度の非相溶なエラストマー相を物理的にブレンドしてμmオーダーで分散させることは、Polypropylene, PPでも有効である1)。段階的に両相を重合して製造するHeterophasic Copolymer, HECOは、機械的なブレンドと比較して分散性と生産性を改善できる。一般に不均一な材料は両相の屈折率差(Δn)により光が散乱され不透明となる。近年PP市場において内容物の高視認性(高透明性)に対する要求が増加してきたことから、われわれはΔnを小さくすることにより厚さ0.3mmのシートのヘーズが5%以下となるPPの“透明HECO”を開発した2)。しかしWhite Index, WI 3)が高く、十分な視認性が得られないという問題が発生した。Fig. 1に示す通り、透明HECOは機械的なブレンドよりも高いWIを示した。本研究の目的は高WIの原因を解明し透明HECOの透明性を改良することである。透明HECOのWI値が大きい原因が0.1~1μmオーダーの密度揺らぎであると仮定し、Ultra Small Angle X-ray Scattering, USAXSにより検討した。
[実験] PPの透明HECO、少量のエチレンを含有するEthylene-Propylene Random Copolymer, RACO及びRACOとΔnの異なる5種類のオレフィン系エラストマー(Fig. 1)を混練したブレンド試料を用いた。エラストマー分率を0.2とし、核剤を添加した。試料をタッチロール方式のシート成形機(40 mmφ押出機、370 mm幅Tダイ)で融液の圧延伸長により結晶化させて厚み0.3 mmのシートを作製した。偏光顕微鏡観察から全てのシート内部にmachine direction, MDに配向したエラストマー層が観察された。BL03XU (FSBL)の第2ハッチにおいてUSAXS観察を行った。X線(波長:0.2 nm、ビームサイズ:100μm×120μm)をシートに対しシート表面に垂直(Through)方向に入射した。カメラ長7.8 m、露光時間10 secで測定した。Imaging Plateで得た2次元散乱パターンの赤道方向の散乱(Fig. 2-a)を円環積分して得られたX線散乱強度からback groundを除去し、散乱体の吸収及び質量補正を行うことで相対強度比較が可能なIxを得た。
[結果・考察] Fig. 2-bにIx vs qを示した。ここでqは波数ベクトルである。RACOとブレンドサンプルでは、Ixがqの増大と共に減少し、WIやヘーズが大きい場合にIxが大きくなることがわかった。一方、透明HECOの Ixにおいて50 nm~500 nmに対応するq範囲にブロードなshoulderが見られた。よって、WIが高い原因として透明HECOに特有な密度揺らぎが寄与している可能性が示唆された。
[結論]  USAXS観察により透明HECOの高WIの原因と思われる密度揺らぎの存在が示唆された。今後の課題は密度揺らぎの実体を解明し、USAXSとWIとの関連性を立証することである。
参考文献 1) S. Danesi and R. S. Porter, Polymer, 19, 4, 448 (1978).
2) 中島武, 食品包装, 54巻, 2号, 38頁 (2010).
3) ASTM E313-1996, 721.
Fig. 1 Relations of transparency and Δn2 for sheet samples (thickness; 0.3mm)
Fig. 2-a USAXS Pattern, 2-b Ix vs q
画像ファイル添付
Fig.1 Relations of transparency and ⊿n2 for sheet samples (thickness;0.3mm) Fig.2-a USAXS pattern, 2-b Ix vs q