利用目的:SACLAビームラインを用いた創薬ターゲット膜タンパク質の構造解析方法の開発に向けた哺乳類の糖輸送体とABCトランスポーターの結晶構造解析 試料名:好熱性紅藻由来ABC輸送体(CmABCB1)、哺乳類由来の糖輸送体—抗体フラグメント複合体結晶 実験方法:凍結結晶を用いたXFEL回折データ収集 使用装置:蛋白質X線結晶構造解析用実験装置(1μmコヒーレント集光装置、超低偏心・高精度ゴニオメータ、極低温窒素ガス吹付け装置、高感度X線CCD検出器、ハンプトンピン対応大容量試料交換ロボット 測定条件:波長1.2386 nm、カメラ長:200 mm、回転角:0.1-0.2度、照射時間:1 pulse (<10 fs) 測定内容:好熱性紅藻由来ABC輸送体については、大きさ200 µmから400 µmの結晶60個から、1つの結晶あたり5から30枚、合計300枚以上の回折画像を収集した。哺乳類由来の糖輸送体—抗体フラグメント複合体結晶については大きさ150 µm x 500 µm x 30 µm程度の結晶9個から、1つの結晶あたり8から16枚、合計70枚程度の回折画像を収集した。 結果概要:好熱性紅藻由来ABC輸送体については、今回のビームタイムで1シフトの時間内に60個のCmABCB1の凍結結晶から0.2度おきに回折画像を収集し、全部で300枚、60度角の回折データを収集することができた。結晶ごとに回折データの処理を行い、17個の結晶から得られた回折データを統合して70%の完全性を持つデータセットを構築することができた。データセットの最高分解能は4.5Åで、データは不完全であるが、分子置換法により位相決定することができた。結晶構造の精密化にはデータの完全性を100%にする必要があり、更なるデータ収集が必要である。 哺乳類由来の糖輸送体—抗体フラグメント複合体結晶については、測定用に調製した結晶は90個程度あったが,3.5Å以上の良好な回折を与える結晶サンプルはごく一部で約9個であった。今回のビームタイムではスクリーニングに多大な時間を費やしたため,1シフトの時間内に9個の凍結結晶から0.1度おきに全部で約70枚の回折画像を収集した。データの最高分解能は3.1Åであった。得られた回折画像がきわめて少ないことと、ループ内の凍結結晶の方位が正確に一致していないという問題点があり、現時点では異なる結晶間でのデータを連続したデータセットとして統合することは困難である。また、本サンプルでは結晶の脱水処理の成否が分解能の向上に大きく影響することが明らかになっているので、今後さらなる条件最適化を行い、安定した高品質の結晶サンプルを測定に供することが必要である。 |