課題情報
課題番号 2012B8036
実験課題名 創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の開発
実験責任者 0032782 岩田 想 (理化学研究所播磨研究所)
ビームライン BL3
タイトル
創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の開発
著者
 
主著者 0032782 Iwata So 理化学研究所播磨研究所
共著者 0000776 Tono Kensuke (公財)高輝度光科学研究センター
共著者 0031331 Mafune Fumitaka 東京大学
共著者 0031532 Song Changyong (独)理化学研究所/RIKEN
共著者 0008841 Hatsui Takaki (独)理化学研究所
共著者 0009673 Leonard Chavas 高エネルギー加速器研究機構
共著者 0009281 Nishimasu Hiroshi 東京大学
共著者 0004145 Ishitani Ryuichiro 東京大学
共著者 0018767 Kon Takahide 大阪大学
共著者 0005903 Mizohata Eiichi 大阪大学
共著者 0009036 Kitago Yu 大阪大学
共著者 0024776 Pan Dongqing 京都大学
共著者 0032625 Hirokane Ryo 京都大学
共著者 0002886 Shimamura Tatsuro 京都大学
共著者 0029078 Nakane Takanori 京都大学
共著者 0008542 Arakawa Takatoshi 京都大学
共著者 0027350 Nomura Norimichi 京都大学
共著者 0002418 Kodan Atsushi 京都大学
共著者 0009674 Hiraki Masahiko 高エネルギー加速器研究機構
共著者 0018807 Tanaka Yoshiki 京都大学
共著者 0005378 Matsui Yumi 第一三共(株)
共著者 0004380 Ihara Kentaro 京都大学
共著者 0007474 Suzuki Mamoru 大阪大学
共著者 0001611 Nakatsu Toru 京都大学
共著者 0034287 Gallat Francois-Xavier High Energy Accelerator Research Organization (KEK institute)
共著者 0003354 Matsugaki Naohiro 高エネルギー加速器研究機構
共著者 0006979 Yamada Yusuke 高エネルギー加速器研究機構
本文
目的
創薬ターゲットの構造は新薬の探索、最適化に重要な情報であるが、膜蛋白質などの高難易度ターゲットの構造決定は現時点では非常に難しくかつ時間を要する。本提案ではSACLA において測定装置開発を進めるグループと主要な創薬ターゲット蛋白質の構造研究を行っている国内の複数のグループを緊密に連携させることにより、各種創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の確立を目指すものである。具体的には、多数のナノ結晶をインジェクターで噴出しそれにXFEL パルスを当て、化学結合の切断されるより短い時間(<10fs)でデータを測定する装置を技術開発の核とする。数多くの結晶より集めた回折データよりコンプリートしたデータセットを作成し、構造解析を行うことを目指している。今回の実験では今回の実験では、まず容易かつ大量に結晶を用意できる、リゾチーム結晶をモデル結晶として、結晶の大きさ、サンプル溶液の粘性、界面活性剤の有無、脂質の有無等の条件を変えることによってサンプルインジェクターのテストを行う。リゾチームに関してはキュービック相中を含め結晶を得る条件が細かく検討されている。リゾチームを用いてサンプルインジョクションの条件を検討及びサンプルチェンバーのアラインメント等を検討した後は、実際の創薬ターゲット膜タンパク質を用いて測定実験を行う。
本プロジェクトは五年間の自由電子レーザーの一環であり、初年度は汎用イメージングチャンバー (MAXIC)を用いて、次年度の専用チャンバーの開発に向けた技術開発を行う。今回のビームタイムではまずモデル蛋白質(リゾチーム)を用いて、各種条件を変えて、インジェクションに適したサンプル状態を検討する。また実際の創薬ターゲット蛋白質微結晶を用いて回折実験をおこなう。また実際に現在の検出器で回折像を記録し、データの処理を行う。実際に結晶が安定にインジェンクションされているか、きちんとビームにあたっているかなどは実際のビームを用いた実験で始めて評価が可能でありSACLAでの実験が不可欠である。得られた結果より、現在のインジェクター、検出器、測定チェンバーの改良を行い、次年度の専用チェンバーの開発につなげる。またインジェクターに適したサンプルの調製法を確立する。

試料名、実験方法、使用装置・実験測定条件
測定は二回あり、1度目(12年10月)はハードウエアの製作が間に合わなかったので、SPring-8同様のゴニオメーターにSpring-8で用いるのと同様の大きさの結晶をマウントして、結晶をループにマウントし低温窒素ガス吹き付け下でデータの測定を行った。共同研究5チームが10種類のサンプルの測定を行った。二度目(12年3月)はmpCCDのマウントの変更が終了したため、MAXICチャンバーを用いて、液体ジェットでサンプルを打ち出し実験を行った。ジェットの調整が難しいので、資料として構造既知のモデルタンパク、リゾチーム及びインスリンを用いて実験を行った。

測定内容、結果の概要
1回位目の実験では、測定した結晶のうち一つを除いて、SPring-8(BL32XU)で1秒間露出したのより、同等か弱い反射しかしめさないものが多かったが、サンプルの一つグルコースの輸送体についてはSpring-8での分解能が3.2Åに対し、2.0Å以上のデータを観測した(図1)。これは結晶が非常に放射線損損傷に弱いため、SPring-8では測定の最中に結晶の損傷がおこっていた物が、SACLAの短いパルス特性により損傷がおこる前にデータがとれたためであると考えられる。二回目の実験では300,000枚以上のリゾチームのデータを測定することができた。データの分解のは1.8Å以上(検出気の限界)であった。その内一条件の1万4000枚のイメージより、6148枚に回折像が移っていることが確認され、3520枚に指数をつけ積分することが可能であった。このデータより構造因子を計算し、分子置換法により良好な電子密度図を描き、モデルを精密化することに成功したこと(図2)。コンプリートネスは100%であり、データのリダンダンシーは最低分解のシェル(6.3Å)で47.2(6.3Å)そして最高分解のシェル(1.8Å)で5.9であった。
画像ファイル添付
グルコース輸送体よりの回折像 計算された電子密度と精密化された構造