[実験課題名]
銅・亜鉛・アルミニウム複合酸化物触媒の局所構造解析
[Title of Experiment]
Local structure analysis of CuO-ZnO-Al2O3 catalyst
[実験責任者 / Project Leader]
出口 博史 / Deguchi Hiroshi (0004133)
[ビームライン / Beamline]
BL16B2
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CO2などの温室効果ガスにより引き起こされる地球温暖化問題は人類が直面している今世紀の大きな問題であり、電力事業者としては火力発電所から排出されるCO2の回収ならびにその有効利用方法を開発することが求められる。関西電力(株)では、回収したCO2の有効利用法開発の一環として、CO2の水素化反応によってメタノールを合成するための触媒開発に取り組んできた。現在取り組んでいる触媒はCuO-ZnO-Al2O3系3成分触媒と、それに助触媒を添加したCuO-ZnO-Al2O3-Ga2O3-MgO系5成分触媒であり、これまでの研究により5成分触媒の方が耐久性および活性に優れていることがわかっている。本研究では、それら2種類の触媒に対し、実際の反応条件におけるCuやZnの挙動をin-situ XAFSにより解析し比較した。
試料触媒はモル比でCuO/ZnO/Al2O3=100/50/2.5(触媒1)およびCuO/ZnO/Al2O3/Ga2O3/MgO=100/50/ 2.5/2/1(触媒2)であり、約20 mgの触媒をそれぞれBN 100mgと混合し、直径13 mmのディスク状に押し固めた。最初に試料を大気圧窒素雰囲気下で473 Kまで昇温してから1.01vol%H2-N2ガスに切り替えて還元処理を行った。引き続いてガスを14.5mol%H2-5.1vol%CO2-N2に切り替えてから0.63 MPaまで昇圧し、その後563 Kまで昇温した。この状態(メタノール合成条件)で6時間維持した。この条件でメタノールが合成されていることはあらかじめ確認した。これら一連の反応中でCuやZnのXAFSスペクトルを繰り返し測定した。
図1に触媒1におけるCu周辺のフーリエ変換を示す。初期状態はCuOであり、91分後の測定ではすべてCuメタルに還元されていた。また、メタノール合成条件に入って直後のフーリエ変換と312分後の動径関数ではCu-Cuピーク高さに変化は見られないことから、銅メタル粒子はメタノール合成条件中に成長していないと考えられる。これらの結果は触媒2でも同様であった。図2に触媒1と触媒2のフーリエ変換の比較を示す。初期状態では両者の差はほとんどないが、還元処理末期では触媒2のCu-Cuピークは触媒1よりも低く、助触媒によって粒径が小さく抑えられていることが示唆される。また、この差は引き続くメタノール合成条件中でも変わらず維持されていることがわかる。 |